任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ

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この見方に対して、東洋建設は「(武澤社長らの退任は)既定路線だった」(時田執行役員)と強調する。武澤社長は2014年4月に就任して以降、9年にわたり経営トップを務めてきた。

東洋建設は不動産開発事業に失敗し、債務免除を受け、2003年から前田建設工業の傘下で経営再建を図ってきた。武澤社長はその経営改革のまさに牽引者だった。「中興の祖と言ってもおかしくない」(別の東洋建設関係者)。

5月24日に行われた社長交代の記者会見で、武澤社長は次のように語った。

「9年間、経営基盤の強化に取り組んだ。社長就任当初は存続の危機だった。純資産200億円を上回るかどうか厳しい状況で、信用力が低下し、民間工事の受注も厳しかった。そこから、社員の頑張りもあり、収益を上げ、純資産を積み上げることができた。前2023年3月期末は純資産が700億円を超えた。立派な数字になったなと思う」

5月24日、社長退任を発表する東洋建設の武澤恭司社長(左)。右は新社長に就任予定の大林東壽取締役(記者撮影)

記者は会見を終えたばかりの武澤社長に近づき、「続投は考えなかったのか」と質問した。武澤社長は「いやいや」と首を横に振りながら、こう語った。「私は守りを託された。それを成し遂げたので、(攻めに転じる)いまがいいタイミングだ」。

この人事案にどのような真相があるかは不明だ。だが、昨年12月にトップ会談が決裂して以降、協議の場が持たれていないYFOと東洋建設の冷え切った関係に、何らかの変化を与える可能性はある。「役員が新しいメンバーに変わることもあり、(こちらからYFOに)対話を再開するメッセージを出していくのは大事なこと」と、東洋建設の時田執行役員は話す。

株式を追加取得する可能性も?

1年以上も続いているYFOと東洋建設の株式攻防戦は、今後どういう展開を見せるのか。

YFOは5月24日に、別のリリースも出している。それによると、東洋建設の同意を得ずに東洋建設株式を追加取得しないことを誓約していたが、5月24日までとしていた誓約期限を延長しない、つまり今後は「東洋建設の株式を買い増す可能性もある」という。

ただ、市場の混乱などを避けるために、保有株式が3分の1を超えないようにし、かつ追加の買い付け価格は提示するTOB価格の1000円を超えないようにする、としている。

上記のリリース内容やこれまでの経緯からして、YFOが強引に会社を“乗っ取る”ような行動に出ることは考えにくい。

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