アメリカの「医薬品不足」あまりに深刻な実態 がん治療すら危ぶまれる厳しい状況にある

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アメリカで処方される医薬品の90%はジェネリック薬品だが、そのジェネリック医薬品会社の経営難などが重なり供給不足の状態が起きている(写真:Erin Schaff/The New York Times)

アメリカでは何千という患者が、がんなど生命を脅かす病気の治療を待たなければならない状況に直面している。医薬品不足が記録的な深刻度に達しているためだ。

病院では、鉛中毒の解毒剤や心臓バイパス手術に必要な無菌液を求めてスタッフが棚を探し回る事態となっている。冬の風邪シーズンに医師や患者がレンサ球菌性咽頭炎などの治療薬をわれ先にと求めた結果、一部の抗生物質は今も品薄のままだ。子ども用のタイレノール(解熱鎮痛剤)すら見つけるのも難しい状況となっていた。

不透明で途絶することのあるサプライチェーンや、品質問題、ジェネリック(後発)医薬品会社の経営難など、当局者は製造中断を引き起こしている問題と格闘しているものの、供給が不足している医薬品のリストは数百種に上る。

ホワイトハウスと議会が調査開始

今回の医薬品不足は極めて深刻で、ホワイトハウスや議会の注目を引きつけるようになっている。アメリカ国内で処方される医薬品の約90%はジェネリック医薬品であり、そのジェネリック医薬品市場が供給不足に陥っている原因の調査にホワイトハウスと議会は乗り出している。

アメリカは医薬品や医薬品原料をインドや中国からの輸入に深く頼っているのが現状だ。そうした中でバイデン政権は、医薬品サプライチェーンの強化に向けて長期的な解決策を見つけるチームを立ち上げた。

議会ではここ何週間と、ジェネリック医薬品メーカーやサプライチェーンの専門家、患者の権利擁護活動家が問題を議論するため証言台に立つようになっている。

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