食品の値上がりで「濃い味」が売れている?の真相 “濃い=おいしい"というわかりやすい贅沢感

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嗜好の二極化はアルコール市場にも表れている。いわゆるストロング系といった高アルコール商品は根強い人気を誇り、市場に定着したといえる。さらには、『ビストロ ストロング ペットボトル 濃いめ赤/濃いめ白』(メルシャン)が3月28日に発売されるなど、風味や味の濃厚さを売り出した商品も続々と登場。

一方で、アルコール3%の『ほろよい』ブランド(サントリー)や、アルコール2~6%の『バー・ポームム』ブランド(サントリー)といった低アルコールRTD(Ready To Drink、プルタブを開けてすぐ飲める缶アルコール飲料)も堅調だ。

アイスクリームにもアルコール

「実はアイスクリームの分野でも、アルコール5%の『クーリッシュ フローズンサワー』(ロッテ)など、アルコール度数が高めの商品が生まれています。2019年に酒税法が改正され、アルコール含有量1%以上の商品を出すことができるようになったことがきっかけです。ただし、一概に高アルコールだから伸びているというわけではなく、ノンアルコールや微アルコールを含め、幅広く多様な商品が出そろったというのが、リアルな現状かなと思います

低コストで手軽に飲めるRTDが成長する一方で、自分の好みの濃さを実現できる希釈タイプの商品も人気だ。サントリーが3月7日に発売した『こだわり酒場のタコハイの素』は、アルコール度数25%で500ml、715円(税込み・編集部調べ)。手っ取り早く酔いたい派にとっては濃いめのレシピで贅沢な一杯を満喫できる一方、アルコールが得意ではない人は好みの割り材を使って薄めの“タコハイ”をコスパよく楽しめる。

「実は濃縮タイプの商品というのは、輸送効率や売り場のスペースといった面でもコスパがいいといえます。昨今は食後に晩酌タイムをゆっくり楽しむというよりは、食中酒として料理に合わせながらお酒を楽しむという飲み方が人気なので、タイパ意識という意味でもこういった商品が人気を集めるのも納得です」

メディアを遡ってみると2012年などにも“濃い味ブーム”が大きく取り上げられており、このトレンドはこの10年ほど断続的に繰り返されている。25年以上にわたり経済停滞を続けている日本において、冒頭の問いである「不景気のときには、濃い味の商品が売れる」というのは、やはり真実なのかもしれない。

「不景気で濃いものが求められるのは、やはり“わかりやすい贅沢感”というのが大きいと思います。手に届く範囲でのご褒美として、暮らしの中で少しでもいいものを選びたいという心の動きは、当然なのかもしれませんね」

値上げラッシュも収まりそうにない中、消費者が潜在的に“濃い味”を求めてしまうのは、必然なのかも。

シズリーナ荒井 アイス研究家、イートデザイナー。アイス食歴38年、年間4000個以上ものアイスを食べ歩く、日本最強のアイスマニア。YouTubeチャンネル『シズリーナ荒井/シズチャンネル』も好評

<取材・文/吉信 武>

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