【産業天気図・建設】大震災発生で「アジアシフト」、「予算執行遅れ」、「調達難」の三重苦

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 とはいえ、公共工事は、土木、建築ともに低価格入札の流れが続く。「国と地方に財源がない」(大手ゼネコン幹部)ので、東北の被災地に予算配分がシフトする可能性が高い。そうなると、他の地方は予算がさらに削られる懸念がある。政府や自治体は、復興関連を含む広範な案件で、民間資金を活用したPFI方式を増やす方針を示すのも、「財源不足を補うため」(同)。PFI方式は、役所にとっては、税金投入額の減額と延べ払いにメリットがあるからだ。ただ、ゼネコン側にとっては、施工案件が完成した後、メンテナンスを含めた運営を行うリスクが生じるので、これで収益が稼げない場合は、業績全体の足を引っ張るおそれがある。

今回の震災を受け、総合を看板にする大手や中堅クラスのゼネコンは「アジアシフト」、「予算執行遅れ」、「資・機材調達難」の三重苦に見舞われた。海外受注を拡大するしか打つ手はないが、前途多難。やはり国内で大型案件を獲得しないと損益分岐点が上がってしまう。さもないと人員を削減しない限りは営業赤字に転落する。採算リスクを抱えながら必死で被災地の案件に食いつくしか生き残る道はない。「ますます熾烈になる」(大手ゼネコン幹部)競争の結果、13年3月期以降の業績は格差が広がって、さらには再編へと発展すると運命づけられた。
(古庄 英一=東洋経済オンライン)

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