「頼みごと」を断りにくくする意外すぎるコツ 無意識の行動である「反射的反応」の驚きの力

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この策は功を奏し、サンフランシスコでの実験ではお金をもらえる確率が17%から73%に上昇した。

ふつうならほとんど注意を向けられない状況で、要求に応えさせる確率を高めるこの戦法は、ピークテクニックと呼ばれている。あなたもたびたびお目にかかっているかもしれない。

私も、制限時速33マイルとか店頭商品17.5%オフといった中途半端な表示を1度か2度見たことがある。

情動は柔軟な思考や行動を可能にする

反射的反応は人が進化を通じて受け継いできた基本的特徴の1つだが、どこかの時点でその方法が改良されて、周囲の困難に対応するためのさらなるシステムが備わった。より柔軟で、それゆえより強力なシステムである。それが情動である。

情動は、我々の心の中でおこなわれる情報処理において、反射的反応の1つ上のレベルに位置しており、ルールに基づいた厳格な反射的反応よりもはるかに優れている。

原始的な脳を持つ動物ですら、情動のおかげで、環境に合わせて精神状態を調節できる。それによって、刺激と反応の対応関係を周囲の特定の要素に合わせて変化させたり、さらには先延ばしにしたりできる。

人間の場合、情動のもたらすこの柔軟性のおかげで、理性的な心からの入力も受け入れて、より優れた決断やより高度な行動をおこなうことができる。

(翻訳:水谷淳)

レナード・ムロディナウ 作家、物理学者

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Leonard Mlodinow

カリフォルニア大学バークレー校で理論物理学の博士号を取得し、マックス・プランク研究所でアレクサンダー・フォン・フンボルト・フェローを経て、カリフォルニア工科大学で教壇に立った。著書に『しらずしらず:あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』(水谷淳訳、ダイヤモンド社、2013年)、『この世界を知るための 人類と科学の400万年史』(水谷淳訳、河出書房新社、2016年、現在河出文庫)、『柔軟的思考:困難を乗り越える独創的な脳』(水谷淳訳、河出書房新社、2019年)などがある。

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