楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも

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2023年第1四半期決算で、モバイル事業は1026億円の営業赤字(前年同期は1323億円の営業赤字)を計上した。楽天グループ全体でも761億円の営業赤字となっており、本業のECと金融が稼いだ利益を食い潰している。

楽天グループの決算短信
楽天グループが5月12日に開示した決算短信には、モバイル事業の2023年度中の黒字化は困難との記載がある。傍線は編集部(編集部撮影)

楽天モバイルの契約回線数(MVNOを除くMNO)は、3月末時点で454万。四半期ベースでは1年前から減少が続いていたが、2022年12月末時点(446万)と比べると、わずかながら増加へと転じた。

ただ、事業単体での営業黒字化には最低でも1000万以上の回線数が必要との見方が多い。足元の回復度合いでは、2023年中に黒字化することは到底無理だと判断したもようだ。

それでも三木谷氏は強気な姿勢を崩していない。5月12日の決算説明会では、「将来的にはナンバーワン携帯キャリアになる」と豪語した。

株価を犠牲にしてでも、巨額の資金調達に踏み切る決断をしたのは、モバイル事業から撤退しない意思の表明とも受け取れる。

KDDIとの新たな契約で方針転換

モバイル事業をめぐる楽天の方針転換は、黒字化計画の後ろ倒しだけではない。通信網の整備についても、従来の「自前主義」を見直す方向へと舵を切った。

5月11日、楽天はKDDIとの間で、自社回線でカバーできていないエリアでKDDIの回線を利用できる「ローミング」契約を新たに締結したと発表した。2023年6月から2026年9月まで、これまでローミングの対象ではなかった東京23区や大阪市といった都市部繁華街や地下空間などにおいて、KDDIの回線を使えるようになるという。

楽天モバイルがKDDIのローミングを使い始めたのは、2019年10月。契約期間は2026年3月末までとし、KDDIに使用料を支払う代わりに、サービス参入当初から全国で顧客へのデータ提供を行えるようにした。

ただ、当時の契約の約款から推計すると、KDDIのローミングが使われた場合、ユーザーの利用料金が仕入れ値を数百円ずつ割り込む「逆ザヤ」が起きていたとみられる。そのためローミングエリア内では、月5GB(ギガバイト)以上は速度制限がかかるプランとなっていた。

こうした事情から、楽天は自前の通信網をできるだけ早く整備するべく、基地局の設置を急ピッチで推進。とくに都市部など人口密集地帯から自社回線のみでカバーするエリアを広げて、KDDIのローミング地域を段階的に減らしてきた。

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