「依存させて強盗」ギャンブルが導く恐ろしい選択 借金1000万、家族離散になってもやめられない

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オンカジの特徴は、1回の勝負で動く金額が大きく、数秒~数十秒で結果が出ることだ。Aさんの夫も、最初はこわごわ100円を賭けるところから始めたが、1年ほどすると1回に60万円もの額を投じるようになり、1度の勝負で100万円近く勝ったこともあるという。勝った快感を再び得ようと賭け、負ければ「ガツンと取り戻す」とまた賭けた。

「30秒に1回、100万円が動くという射幸性の高さから逃れられず、借金苦でうつ病まで発症しても、やりたい衝動を抑えられなかった。それによって妻や子どもたち、親にまで迷惑をかけて申し訳なく感じている」と話していた。

しかし残念ながら、Aさんの夫はその後も再発を繰り返した。依存症は完治のない病気と言われ、再発も起きやすい。「今日はギャンブルしなかった」という日を、一日一日積み上げていくしかないのだ。

犯罪絡みの相談急増 支援団体が警鐘

「考える会」の田中紀子代表によると、同会に2022年度に寄せられた当事者・家族からの相談396件のうち17.7%に、何らかの犯罪が絡んでいた。東京都狛江市などで起きた連続強盗事件でも、被疑者の一部がギャンブルに関わっていたことが報じられている。

また、ギャンブルで闇金に借金をした際の取り立ても、以前に比べて暴力的で執拗になったという。かつては弁護士が通達を出すと取り立てがおさまっていたが、それではおさまらず本人に暴行を加えたり、家族の勤め先のみならず周辺企業にまで嫌がらせの電話攻勢をかけたりする業者もある。

「闇金への返済ができず、困りはてた人が闇バイトに誘い込まれ窃盗の共犯になったり、口座を売り渡したりするケースが増えている。今年は犯罪絡みの相談が2割を超える恐れもあります」

また、コロナ禍でネットに接する時間や機会が増えたことによって、Aさんの夫のようにオンラインギャンブルで急速に依存症に陥る人も急増した。カジノ以外に競馬・競輪といった公営競技のオンライン化が進んだことも大きな要因だ。パチンコなどリアルの賭け事に比べ、オンラインは若い世代の利用が多いうえ、短時間で依存症に陥りやすく、借金額も非常に多くなりがちだ。

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