イオンが首都圏スーパーを次々に「呑み込む」事情 いなげやを連結子会社にするに至った背景

拡大
縮小

しかし、この10年間にUSMHを組成、まいばすけっと、を一から作り上げ、今回いなげやを統合したことで、食品スーパーだけで1兆2000億円弱の規模となった(GMSであるイオンリテール、ダイエーの首都圏売り上げは開示されていないが、さらに数千億規模の売り上げがあるだろう)。知らない間に、イオンは首都圏でもトップシェアを確立していたのである。

イオンが首都圏のシェアアップにこだわる理由は簡単だ。人口減少が進めば、これまでイオンが地盤としてきた地方、郊外のロードサイドを中心とした小売りマーケットは縮小することが確実だからである。

首都圏は国内市場の3分の1以上を占める巨大市場であるとともに、今後もかなりの期間、人口がほとんど減らない。このマーケットを押さえずして、真の国内流通トップ企業として持続可能性を保つことはできない。全国にさまざまな業態を展開している流通大手は、いまやイオンしかなく、セブン&アイも実態は巨大グローバルコンビニ企業である。

(外部配信先では図表・グラフや画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

地方マーケットの縮小に向き合いながら成長戦略を描き続けなければならないイオンは、首都圏制覇とドラッグストアの拡大で時間を稼ぎつつ、付帯ビジネス(金融、デベロッパー、リテールメディアなど)の増強と海外展開というシナリオを描き続けねばならないのだ。

首都圏の食品スーパー20年の変化

では、首都圏の食品流通市場はどんなマーケットなのか、なぜ、いなげやはイオン傘下に合流することになったのか。これは首都圏食品スーパーの20年間の盛衰を確認することで、大まかにみえてくる。

次の表は首都圏周辺を地盤とする主な食品スーパーの売り上げを2003年度と2021年度で比較して、増加額の多い順に並べたものだ。オーケー、ライフ、ヤオコー、ベルク、ロピア、まいばすけっと、が上位に名を連ねており、逆に下位となったのは、東急ストア、相鉄ローゼン、東武ストア、といった民鉄系スーパーである(ライフは大阪と半々のため、首都圏はこの半分くらいであろう)。

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