勃発!「セブンvs物言う株主」委任状争奪戦の行方 バリューアクトの株主提案にセブンが徹底抗戦

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一方のそごう・西武に関しても、米投資ファンドに全株式を売却する契約まで結んだものの、いまだ実行できないばかりか、メドさえ立っていない。

こうした事態を招いた経営陣に対し、アクティビストならずとも投資家からは「ガバナンス不全」を問う声が上がる。これがセブン&アイにとって3つ目の苦難である。長期間にわたって、問題を何ら解決してこなかった経営陣のリーダーシップのなさと実行力の欠如が問われているのだ。

好業績が隠れみのに

では、なぜ経営陣は問題の解決を図ることができないのか。

ヨーカ堂に関しては、セブン&アイの祖業であることがネックになっている。しかも井阪社長は創業家である伊藤家のバックアップを受けて社長に就いたという事情もあってなおさら手をつけにくい。

だがそれにも増して大きいのは、セブン&アイの業績が絶好調であることだ。23年2月期、小売業としては初めて売上高(営業収益)が11兆円を突破、最高益を更新しており、「業績のよさが責任逃れの隠れみのになっている」(投資ファンド幹部)というわけだ。

しかしこうした好業績も、決して安心できるものではない。というのも、21年に約2兆円で買収したガソリンスタンド併設型コンビニの米スピードウェイを含む北米コンビニ事業が、売上高の実に7割以上を占める「一本足」だからだ。

好調なスピードウェイも将来的に不透明な面を抱えている。フレッシュフードを導入するなど“日本化”を進めているが、顧客層などが日本と違うため今後の成長が見通せないからだ。米国も決して安泰とはいえず、セブン&アイが最高益である今こそ、国内の不採算事業の処理を急ぐ必要がある。

そこでこの特集では、セブン&アイが抱える構造的な問題や、グループ改革の成否などについて、井阪社長ら当事者のインタビューも交えながら見てゆくことにする。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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