欧米のエリートはなぜ「NO!」と言うのか 「答えのない問い」で鍛えられる人たち
彼と徐々に意思疎通ができるようになると、彼の口ぐせがとても気になるようになったのです。彼は、私がなにを言おうと必ず、
「ノン(No)」
と返してきます。毎回のことなので、
「彼は僕に不満でもあるのだろうか?」
と心配になってきました。それと同時に私の意見が否定されているようにも感じ、ちょっと不愉快にもなってきたのでした。
同級生の思いがけない返答
そんなわだかまりを解消しようと、ある日、意を決して彼にこう尋ねてみました。
「なぜ君は、僕の話に必ず『ノン』と返してくるの? なにか不満でもあるの?」
すると彼はこう答えました。
「君が話したことに対して、僕が『ウィ(Yes)』と返したのでは、会話が深まらないじゃないか。相手と違う意見を返してこそ、お互いの考えが深まっていくんだ。だから君は、僕に感謝すべきなんだよ」
それまでの私にはなかった感覚に気づかされ、とても驚きました。そして、頭の中で新しい思考回路が突如としてつながったような感覚に襲われたのです。
フランス人が議論好きだということは、なんとなく知ってはいましたが「なるほど、こういうことなのか!」と納得もしました。
もちろん、すべてのフランス人が彼のように「ノン」と返してくるわけではありません。しかし、日本の銀行に勤め、日本的なコミュニケーションに慣れ親しんでいた私にとって、この出来事が思考法の転換を促す、衝撃的な“気づき”となったのでした。
それからというもの、会話をするときに私も意識して「ノン」と返してみることにしました。すると、確かにお互いの意見が深まることがわかりました。
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