日本株の崩落が、いよいよ始まった? 米ドル安をめぐる「2つの謎」は解けるか

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実は、国内の株価については、最近は米国株や米ドル円相場との関連性が薄れ、米株安や円高になっても日本株安にはなりにくい様相を示していた。その大きな理由は、市場の目が日本の内需に移っていたからだろう。

消費者心理を示す消費者態度指数は、昨年4月と11月の二点底を経過して、持ち直しに入っている。百貨店やスーパーの2月の売上高(前年比)は、11カ月ぶりにプラスとなった。今年のベースアップが、消費増税を伴わない給与増であることも明るい材料だ。

2月期の企業決算の発表が一巡したが、内容が良いものが多く、小売、食品などの内需関連株が物色された。国内株価が内需の良さに支えられていれば、米国株や米ドルの動向にかかわらず、日本株が上昇してもおかしくはないわけだ。

しかし内需株については、株価上昇が速く、PER等で見た割高感が台頭した。このため投資家の警戒感が生じ、例えば花王は8日(水)に、山崎製パンやツルハホールディングスは9日(木)に、イオンやマツモトキヨシは15日(水)に、それぞれザラ場ベースでの高値を付けて、株価が反落してきている。すなわち、消費関連銘柄の株価が、ここ1~2週間に、軒並みピークアウトし始めているわけだ。

ドル安では輸出株買えず、「間の悪さ」が下落助長も

こうした時、通常は、内需株が崩れれば、「では次は輸出関連に」、と物色が移るところだ。しかし、いざ再び輸出株を買おうとしたところで米国株価の暗雲や円高が始まり、輸出株を買いづらい空気が広がっている。この「間の悪さ」が、足元の国内株式市況全般の崩れを深刻化しつつあるとも言えるだろう。

そうした全体観の中で、今週の日経平均のレンジは1万9100~1万9800円と見込む。依然として、日経平均がいったんは反発し、2万円超えを見せる、というシナリオの可能性も残ってはいるが、そうした展開であっても、その後は1万9000円を割れて下げていくと予想している。

株価が一度戻ってから下落するにせよ、このままずるずると下落するにせよ、現時点では、思い切り株式保有を増やすことは勧めない。先行き株価が大きく下げた時に安値で買うために、今は現金を用意する局面であると考えている。
 

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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