アマゾンが配達員の「起業支援」まで踏み込む訳 自社配送の拡大へドライバー確保に“奥の手"

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ドライバーは商品情報や届け先などが表示される、アマゾンのアプリ「ラビット」の指示を基に配送を進める。目羅社長は各ドライバーの位置情報や配送状況をリアルタイムで把握。遅れ気味のドライバーがいれば、ほかのドライバーがサポートするなどで全体の効率を引き上げる。

大手での経験を元に独立した目羅社長。ドライバーの環境を重視した経営を目指している(撮影:大澤誠)

届け先の顧客が不在の場合は電話やテキストメッセージで連絡を取り、極力その日に届ける。「指定された時間を守り、荷物を壊さずに届けることが原点。そこを大事にしている」(目羅社長)。

目羅社長は大手宅配会社でセールスドライバーなどの経験を経て、都内の大型営業所に配属された時に宅配を学んだ。委託業者とのコミュニケーションを重ねる中「宅配は最も重要で、かつ難しい」と認識が180度変わったという。消費者の要求が複雑で、高度な対応が求められるからだ。

配属された営業所では、品質担当としてドライバーの意識改革を行った。優秀なドライバーがどれだけ仕事をこなしているかを数値で「見える化」すると、追いつき学ぼうとするスタッフが増え始めた。さまざまな改善策を試行錯誤しながら続けたことで、6年ほどでワースト2位から全国2位まで評価を押し上げた。「やりつくしたな」と感じ、独立の道を選ぶことになる。

物流業界の働き方を変える

ワントラック設立後、しばらくして見つけた「デリバリーサービスパートナー(特定地域の配送を担当)」に応募すると、アマゾンジャパンから実証段階だった「起業家支援」のオファーが寄せられた。無事に面接を通り、昨年秋から配送をスタートさせている。

通常の運送会社と異なるのは、毎日運ぶ荷物が安定して存在すること。つねに車両が稼働し、売り上げと利益が見込める。ドライバーの採用や増車も積極的に実施している。アマゾンの各種インフラやシステムを活用できることも大きなメリットと捉えている。

目羅社長が目標に据えるのは、新たな人材が積極的に入ってくる環境を作ること。業界では仕事の紹介料として運送会社からロイヤルティーを引かれることが多く、多重下請けも横行している。ワントラックはロイヤルティーをとらず、仕事の再委託も禁止した。

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