「ハイエース」を自家用車として購入する人々 商用バンの王様はどんな人に買われているのか

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特徴的なのは「キャンプ・アウトドア」「レジャー・スポーツ」、そして「車中泊」の多さである。この3つはいずれも50%前後の人が選択しており、かなり高い。

車種そのものの特徴だけでなく、アフターパーツが非常に充実しておりカスタマイズ性に優れる点も、こういった用途のために選ばれる理由だろう。ハイエースベースのキャンピングカーも全国のビルダーから販売されているし、サードパーティ性のパッケージも豊富である。

標準ボディ「スーパーGT」の室内。広大な荷室が特徴(写真:トヨタ自動車)

一方で用途として“想定されていない点”は、さきほどの「購入時の重視項目」と連動するように、「ちょっとした外出」「通勤・通学」「家族の送り迎え」「子どもを乗せての遠出」といった日常系の項目だ。いずれも、M/Lサイズミニバンオーナーより大きく下がる。

ハイエースユーザーならではの「価値観」

強い意志や明確な利用シーンがあるために、ハイエースを選んでいる。そんなユーザー像が、見えてきた。最後にハイエースオーナーとM/Lサイズミニバンのオーナーを比較することで、価値観にどういった特徴が見られるかを紹介する。

1つ目は、クルマにかぎらず消費や生活全般における項目から。「既成の商品に手を加えたり別な使い方をすることがある」の結果を見てみると、ハイエースオーナーはM/Lサイズミニバンより「あてはまる」人が多い。

この傾向はクルマにおいても同様であり、「車は買ったままではなく自分なりに手を加えたい」の質問でも「あてはまる」と答えた人の割合が高かった。興味深いのは、クルマの話になると「あてはまる」の割合はさらに高まり、4割近くに達する点だ。

最後に、「多少無理をしても気に入った車を選ぶ」の質問に対する答えを見てみると、やはりハイエースユーザーの“こだわりの強さ”が見えた。ハイエースは、アフターパーツを揃えてカスタマイズしていくとそれなりにお金のかかる車種であるが、それでも「ハイエースでなくてはならない」と指名買いしている人が多いのだ。

今回は、ハイエースを商用車ではなく自家用車として購入した人たちの志向を見てきた。運転席の真下にエンジンルームがあるキャブオーバータイプのハイエースは、乗り心地や走行性能の点で必ずしも乗用車としての利用に適さない部分もあるが、ハイエースの特徴や機能に魅せられて選んでいる人の多さが、データからもはっきりと見て取れた。

スズキ「ジムニー」やルノー「カングー」と同じく、堅牢でプリミティブな魅力を持つハイエース。この唯一無二のワンボックス車を選ぶ人の考えや気持ちの一端が、見えたのではないだろうか。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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