沖縄に「観光以外の産業も」映画祭の大きな挑戦 貧困の島と呼ばれる沖縄の社会問題を解決

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そうしたなか開催された今回の2期目のコンテストには、15組による事業プランが発表された。

15組のプレゼンからは、副業による農業の人手不足解消、外来魚の食資源活用、保護犬猫の殺処分ゼロ、同性パートナー家族の生活向上、島国の子どもたちの遠征費用問題など、沖縄が抱える社会課題が浮き彫りにされた。

観客投票による審査の結果、今年の「うむさんラブ賞」を受賞したのは「看取り沖縄」プロジェクトだ。

最優秀賞「うむさんラブ賞」を受賞した「看取り沖縄」プロジェクトの安里裕子さん(右)。沖縄国際映画祭実行委員長の大﨑洋氏から記念の泡盛が贈られた(写真:吉本興業提供)

近い未来に多死社会を迎え、看取り難民が多く出る日本において“本人と家族が安心して最期を迎えられる沖縄”になることを目指して活動するプロジェクトだ。

家族や本人の最期の希望に寄り添えるように、さまざまなサポートをする「看取りのコーディネート」などを提言した。この先、島ラブのサポートを受けながら具体的な事業化が進められる。

島ラブを運営する、うむさんラボ社の代表取締役・比屋根隆氏は「昨年の1期目のあと、大学でソーシャルビジネスの講座を持ってほしいという声もいただきました。島ラブを通して沖縄にソーシャルビジネスの種を蒔くことができています。

1期目と2期目のチームがつながってやりとりをしていることもあり、今回は個々のビジネスアイデアもよりユニークで面白いものが出てきています。それは活動が循環していることを示していて、さらにそれを広げていくのが島ラブのミッションです」と語る。

すべてが事業化できるわけでもない

もちろん、彼らのソーシャルビジネスのアイデアすべてが持続可能なビジネスとして事業化できるわけではない。ビジネスになるものと、ならなくてもプロジェクトベースで身近な仲間を巻き込んで地域をよくしていくものがある。

比屋根氏は「その両方があっていい」と語る。

「事業にはならなくても継続してプロジェクト化していくことで、身近な課題を解決したいという小さな思いを持つ人が沖縄に増える。そうなると、そのなかの一部が持続可能なビジネスモデルにつながっていく。島ラブはその土台を作っています」

そんな島ラブはまだスタートして2年。比屋根氏は「沖縄がソーシャルビジネス・アイランドになる道のりのまだ10%も進んでいない」とする一方で、「沖縄のいいところは小さくて伝播力が強いところ。みんなで沖縄をよくしようという思いと力があるから、加速力はある。ここから一気にドライブをかけていくんじゃないかという気はします」と語った。

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