「デンマーク選挙に出馬」日本人女性の驚きの体験 制度、活動、政治への意識などさまざま異なる

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デンマークの投票率は、2019年の国政選挙で84.2%、2021年の地方自治選でも67.2%と日本を大きく上回る。その背景には、教育と社会のあり方が関係している。

「自分が社会を作っている構成員のひとりという意識が、子どものころから培われるからだと思います。幼稚園から民主主義という言葉を聞き、まわりの大人は子どもに『あなたはどうしたいの』と聞く。大人が一方的に決めることなく、今日は何を食べたい、何して遊びたいなどと聞くので、子どもは自分の決断一つひとつで毎日ができていると認識できるのです」

民主主義は一人ひとりの意見が尊重されること

改めて、民主主義とは何だろう。

「一人ひとりの意見が尊重されて、誰の権利も奪われず、誰も取り残さないこと」と朋子さんは説明する。

「息子が幼稚園に通っているとき、毎日何して遊ぶかは子どもたちが決めていました。例えば、大きな木のブランコで遊ぶことになり、どうするかも自分たちで話し合う。

座って5回で満足する子がいれば、5回立ちこぎした後に5回座って乗りたい子もいて、みんな感覚が違うことを知ります。もし先生が初めから『ひとり5回座り乗りしたら交代』と決めてしまったら、自分や人の思いに気付けませんよね。デンマークでは生活のすべてがそんな感じ。特に大事なことはみんなの意見を知ったうえで、すり合わせていきます」

小さな成功体験も重要な要素だ。「まちにどんな公園が欲しいかと問いかけられて子どもが答えると、まわりの大人が地域の助成制度に申請したり、議会で話し合われたりして、実際に公園ができることも。自分たちの声によってまちや社会ができていくという感覚を持つことができます」

学校では、先生が対話型でこんな話をするという。「キミたちはなぜ学校に来てると思う?」「今の世の中の仕組みについてどう思う?」「毎日暮らしていて幸せ?」「幸せじゃないことがあるなら変わったほうがいいよね。社会の仕組みが変わって定着するまで20年ぐらいかかるよ。今、学んで行動すれば、20年後は自分たちがいたい世界にいられるかもしれない。そのやり方を学ぶために学校に来るんだよ」と。

「子どもたちは自分に何ができるだろうと考えるようになりますよね」と朋子さん。

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