無意識に「子育てにコスパ」求める親の悲惨な現実 知らずに「条件付き子育て」に陥っていませんか

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以上のようなお話をすると、「愛情を与えることと習い事、塾などは別の問題でしょう」「習い事や塾などは、上達することを目的に習わせているのだからリターンはあってしかるべき」と思う人がいるかもしれません。

そこで次のことを考えたいと思います。それは「何のために子どもを育てているのでしょうか?」という問いです。

たいていは、「子どもの幸せのため」と回答する人が多いのではないかと思います。では、「子どもの幸せとは何でしょうか?」。

「塾に行って成績を上げること」「習い事で上達すること」もその一つかもしれませんが、それは部分的であって本質的ではありません。

本当の子どもの幸せとは何か?

子どもの幸せとは、人によってさまざま見解が異なると思いますが、少なくとも、「その子がその子らしく生きていくことができる状態にあること」ではないかと筆者は考えます。

塾でも習い事でも子どもが自分で作った目標に向けて頑張っているのであれば、その子らしく生きている状態だと考えられます。しかし、親が作った目標や、ここまで伸びてほしいという親の期待のために子どもが頑張らざるをえないとしたら、その子らしく生きている状態とは言いがたいのではないでしょうか。

そう考えると、親の期待に応えてほしい状態は、子どもの幸せにつながるものではなく、単に親が心配をなくしたい、焦りを鎮めたい、自分が安心したいだけと言うこともできます。

子どもは親の意図や内面をよく感じています。もし安西さんのお子さんがそれを感じているとしたら、親の期待とは真逆の方向へ進むこともあります。

安西さんに今、必要なことは、「本当の親の幸せ、子どもの幸せとは何か?」について考えてみることだと思います。

ここを出発点に考えていけば、子どもの見方、対応の仕方、声かけが自然に変わっていきます。すると、気づくといつの間にか子どもは変わっています。期待をするのではなく、今のお子さんそのものを肯定し、健康でいてくれるだけで感謝という気持ちを持つことで親の幸せ感が増幅し、その感情がまた子どもの幸せにつながるというサイクルができていきます。

安西さんの根底には子どもを愛する気持ちがあります。ですから難しいことはありません。少し変えてみるだけで状況は大きく変わっていくと思います。

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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