薪調理の煙、危険だが人々のリスク認知には歪み 主観的なリスク予想と客観的なリスクのズレ

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かまどの前に座り煮炊きをする途上国の女性
途上国の家庭では料理中に大量の煙が発生する(写真:筆者撮影)

私たちは日頃、「AをしたらBになる」という予想の下で暮らしている。例えば、「上着を着ないと風邪をひく」「手を洗わないと病気に感染する」「たばこの煙を吸うと子どもがせきをする」などだ。

しかし、同じ因果関係が誰にでも当てはまるとは限らない。体の強さや病気の重症化リスクは人によって違う。そして、ある選択が自分と他者にどんな結果をもたらすかを、皆が正しく見積もっているとは限らない。自分のことになると油断してしまう人もいれば、逆に、心配しすぎる人もいる。リスクに対する認知がずれているとき、個人の選択は本人にも社会にも悪影響を及ぼしうる。

スウェーデン・ヨーテボリ大学の環境経済学者、オロフ・ヨハンソン=ステンマンは2008年の論文で、個人のリスク認知がどのくらい偏っているかを示す枠組みを提唱した。筆者らの研究チームはこの理論を掘り起こして、個人単位の主観的なリスク認知の偏りを定量的に推定する研究枠組みを開発し、「主観的リスク予想関数」と名付けた。それを用いると、個人単位と社会全体の両方について、「リスク認知がどのくらい偏っているか」を示すことが可能だ。

次ページ前述の枠組みを実社会に当てはめて検証
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