線路の一般部に用いられるPCマクラギは、腐食などの心配がなく耐用年数が長い、「軌道狂い進み」が小さい、安定性があってロングレール敷設に適している、などのメリットがある。一方で、重量が大きいため交換作業に手間がかかり、電気絶縁性は木製に比べて劣る。
合成マクラギは耐用年数が長いうえ、絶縁抵抗が高く、木材と同様に加工がしやすいなどの特徴がある。木マクラギは、安価で扱いやすい反面、損傷や劣化に弱く、車庫線の分岐部や工事区間向けに使用される。
ほかに小田急では縦マクラギ構造の「バラスト・ラダー軌道」を都市部で見ることができる。また、合成ゴム製の弾性材を挟むことで騒音を低減する「弾性マクラギ直結軌道」や、防振材によりコンクリート路盤から浮かせた縦マクラギの「フローティング・ラダー軌道」は複々線の高架区間などに敷設されている。
まさに適材適所で敷設されているマクラギ。平均交換年数などについては「各種の条件、因子の影響を受けバラツキが多く不明」(同社工務部)という。交換後は産業廃棄物として処理される。
保線係員の励みになるのは…
今回の合同作業の指揮者を務めた秦野工務区副班長の小川洋司さんは「駅員や運転士、車掌と違いお客様と接する機会はまったくないですが、電車が安全に走ることがやりがいになっています」と話す。同区では担当エリアの線路を15~20日周期で見張員を立てながら徒歩で点検している。「たまに耳に入る、お客さまの『揺れない』という言葉が励みになっています。小田原のほうにいくと畑が多いので、線路の点検をしていると『ご苦労さまです。よくなったね』と農家の方にも声をかけてもらえる」という。
小田急の「マクラギ」
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車庫線の分岐部に使われる木マクラギ
(記者撮影)
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交換作業を前にしたミーティング。注意事項を確認する
(記者撮影)
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木マクラギ交換の現場
(記者撮影)
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この新しい木マクラギに交換する
(記者撮影)
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交換作業に取りかかる
(記者撮影)
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バラストを取り除くと劣化が進行している
のがわかる(記者撮影)
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分岐部の木マクラギ
(記者撮影)
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木マクラギの周りのバラストを取り除く
(記者撮影)
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新しい木マクラギ。防腐処理がされている
(記者撮影)
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この器具でマクラギを持ち運ぶ
(記者撮影)
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バラストを取り除いていく
(記者撮影)
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バラストを取り除いていく
(記者撮影)
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レールと固定している犬釘を抜く
(記者撮影)
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レールと固定している犬釘を抜く
(記者撮影)
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取り外された古い木マクラギ
(記者撮影)
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区ごとに分担して作業を進める
(記者撮影)
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区ごとに分担して作業を進める
(記者撮影)
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取り外された犬釘
(記者撮影)
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バラストと古い木マクラギ
(記者撮影)
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今回交換した分岐部の木マクラギは2.5~2.8mの
長さがある(記者撮影)
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新しい木マクラギに交換する
(記者撮影)
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新しい木マクラギをレールの下に差し込む
(記者撮影)
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新しい木マクラギをレールの下に差し込む
(記者撮影)
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新しい木マクラギをレールの下に差し込む
(記者撮影)
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レールにチョークで示された分担。中央より
左が秦野工務区、右が機械保線区(記者撮影)
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レールの下に並んだ新しい木マクラギ
(記者撮影)
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レールの下に並んだ新しい木マクラギ
(記者撮影)
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午前の作業はいったんここまで
(記者撮影)
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参加した4区の保線係員ら
(記者撮影)
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近くでは通常のバラストの積み込み作業も
(記者撮影)
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バラストは小田急エンジニアリングを通じて甲州砕石
大月営業所から調達している(記者撮影)
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夜の作業に備えてバラストを積み込む
(記者撮影)
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参宮橋駅構内はバラスト・ラダー軌道
(記者撮影)
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参宮橋構内のバラスト・ラダー軌道
(記者撮影)
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左がPCマクラギ、右がバラスト・ラダー軌道
(記者撮影)
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代々木上原付近から見た小田原方。上りと下りで
マクラギの敷設が違うことも(記者撮影)
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江ノ島線の長後駅付近。分岐部は合成マクラギ
(記者撮影)
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茶色に見える右側が合成マクラギ
(記者撮影)
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鉄道旅の楽しみ方の1つに「乗り鉄」がある。新型車両か往年の名車か、電車か気動車か、それとも蒸気機関車か――。鉄道会社によってさまざまな特徴があるなかで、好みの車両や座席、車窓の眺めを目的に旅のプランを練るのが醍醐味だ。一方、敷かれた線路にも各社の個性が表れる。見えないところで汗を流す、日々の保線作業を思い浮かべながら乗車してみると、旅の味わいが一段と増しそうだ。
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はしむら きしん / Kishin Hashimura
三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。
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