圧倒的に多い「自宅転倒」おひとりさまの重大危険 高齢期の前に進めておきたい片づけのポイント

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もし、どこから片づければいいかわからない場合、最初に片づけるのは、いつも使っている場所です。使っていない場所を、わざわざ片づける必要はありません。また、天袋は数年間まったく使わなかったモノが入っていることが多いです。つまり、これまで開けなくてもまったく不自由を感じなかったわけです。

このような場所は、片づけなくていい場所と言えます。せっかくモノが収まっているのに、天袋からわざわざすべて引っ張り出して、整理し直す必要はないのです。理想の部屋にするためには、すべての場所を整理する必要はありません。おひとりさまの片づけは、重点的に片づけるべき場所や、わかりやすく整理するべきモノがあり、そこをおさえて片づければいいのです。

ポイント② 何よりも「安心・安全」が大切

おひとりさまの片づけのそもそもの目的は何でしょうか? それは、シニア世代に向けて「ずっと元気で楽しく暮らせる部屋にすること」です。そのためには、安心して暮らせる、安全な部屋にすることが大切です。

「安心・安全な部屋」と聞くと、「うちは危険な部屋なんかないから大丈夫!」と思われるかもしれません。けれども、下の東京消防庁のデータを見てもらうとわかるように、実は、多くの高齢者が自宅内で転んで救急搬送されているのです。

「ころぶ(転倒)」「落ちる」「おぼれる」「やけど」など、日常生活の事故の理由を調べると、高齢者では「ころぶ(転倒)」が約8割を占め、発生場所は「居住場所」、つまり自宅内59.4%と6割近くに及んでいます。私が「おひとりさまの片づけでは、何よりも安心・安全が大事です」と口を酸っぱくしてお話しする理由は、こうしたデータが根拠になっています。

(左)高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(右)高齢者の「ころぶ」事故の程度別救急搬送人員/出典:「令和2年<2020年>救急搬送データから見る日常生活事故の実態(東京消防庁)/「おひとりさま最後の片づけ」P43 より引用

高齢になると、体力や筋力の低下により敷居などのほんの小さな段差でもつまずいて転んでしまいます。このほか、コタツのコードやコタツ布団、階段など、家の中には実は危険なものがいくつもあるのです。

しかも、高齢者の「ころぶ」事故で怖いのは、大腿骨骨折など大きなケガにつながりやすく、入院しなければならなくなることです。2020年のデータでは、救急搬送された高齢者の38.3%と4割近くが、入院の必要がある「中等症以上」と診断されています。

歳をとるとケガの治りも遅くなります。入院生活が長く続くと、心身の機能が一気に衰えるため、「ころぶ」事故がきっかけで車イス生活になったり、寝たきりになったりしかねません。そうならないためにも、「安心・安全」を第一に部屋を点検することはとても重要です。

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