ウクライナ戦争を止められない政治家の本質 選挙で政治家を選ぶだけが民主主義ではない理由

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ベルトンは2冊を紹介しながら、今世界で起こっている状況に2冊で展開されている議論を当てはめていく。

『政治的悪の心理学』(Political Ponerology)

『超限戦』から言えることは、今世界で起こっていることは、個々の戦争というレベルのものではなく、権力に飢えた政治家たちによる覇権戦争だということだ。

その背景には、世界を制覇したいという覇権主義者の妄想があり、その原因をつくったのがグローバリズムだというのだ。グローバル化した資本主義の発展が個々各所で、覇権国相互の対立を生み出した。それは経済の領域を乗り越え、あらゆる分野での覇権構想を導き出したのだという。

映画『マスク』に出てきた超人的パワー

しかし、ことをことさら拡大させているのは、そのグローバリズムを牽引している政治家というエリート層の心理構造にあるという。1994年に公開されたアメリカ映画に、『マスク』(The Mask)という作品がある。主演のジム・キャリーをスターに押し上げた作品だ。マスク、すなわち仮面をかぶると超人的パワーが宿り、何でもできるというストーリーだ。

マスクにはその人間の性格が表れるので、いい人間がかぶるとその超人的パワーは幸せな世界を生みだすが、悪い人間がかぶれば途端に世界は悪の世界と化す。

この「マスク」を「権力」に置き換えたらどうなるだろう。「権力」はその人物の性格で左右されると考えれば、ロバチェフスキーの研究の意味もわかる。もし革命家と称する新しい政権の人々が、悪意ある性格を持っていたらどうか。こうした革命家は、革命という大義名分とは裏腹に、自己の利益と自己の暴力的充足感を満足させることを目的として、革命に参加したことになる。

確かにスターリン主義の持つ問題は、スターリン個人の権力願望によるところも大きいが、それだけですべてが説明できるわけではない。それは、なぜ人々がそれにやすやすと従ったかという問題があるからだ。

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