旭化成「巨額減損で最終赤字」でも前向きな理由 車載電池用セパレーターで誤算も明るい兆し

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旭化成の乾式セパレーターは、事業買収時の想定と比べて伸び悩む(写真:旭化成)

1850億円の減損損失が発生し、2023年3月期は1050億円の最終赤字(従来予想は700億円の黒字)に転落するーー。旭化成は3月8日、そう発表した。数字だけを見れば、かなり厳しいものに映る。最終赤字は2003年3月期以来、20年ぶりだ。

けれども、その中身は実はネガティブなものではなかった。それどころか、旭化成のセパレーターの前途には、明るい兆しも見えてきている。

旭化成が減損損失を計上したのは、リチウムイオン電池向けセパレーターを手掛けるアメリカの子会社ポリポアだ。旭化成は2015年に約2600億円で買収していた。

リチウムイオン電池向けのセパレーターには、製法が異なる乾式と湿式の2種類がある。旭化成は、湿式はもともと約40年前から展開してきた。買収によって手に入れたポリポア社が展開するのは、乾式のほうだ。

近年、カーボンニュートラルの流れで、電気自動車(EV)が急速に数量を伸ばしている。そこに連動して、車載向けのリチウムイオン電池市場も順調に拡大中だ。それなのに、ポリポアがこれだけの減損を出すほど低迷するのには、理由がある。

乾式は波に乗り切れず

EVなどの車載向け電池は、大きく言えば三元系の正極材の電池と、リン酸鉄系の正極材の電池に分けられる。三元系にはニッケル、マンガン、コバルトなどの希少金属が使われ、リン酸鉄系よりも原価が高い。だがエネルギー密度は高く、航続距離の面で優れている。

市場規模が圧倒的に大きいのは三元系だ。こちらで主に使われるセパレーターは湿式のほう。湿式は幕を薄く作れるため、その分だけほかの電池材料を入れることができ、電池の高容量化が可能だからだ。そのため、車に積む電池のスペースが限られる乗用車向けに採用されている。

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