エリート官僚「過度な忖度」に走った2つの決定打 アベノミクス導入も経済成長を妨げた日本の失敗

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安倍政権は、現実主義を貫いたこともあって、7年8カ月超に及ぶわが国憲政史上最長の長期政権を樹立することになる。連続在任日数2822日、通算在任日数3188日で、わが国史上最長の内閣総理大臣在任日数を記録した。

その安倍元首相も2022(令和4)年7月8日に凶弾に倒れ、この世にはいない。安倍内閣でもっとも評価できるのは、世界的政治学者エドワード・ルトワックも言うように、「戦後の日本で『日本政府の政策』を再導入した最初の首相」であったことではなかろうか。

安倍政権以前は、日本の外務省、陸上自衛隊、海上自衛隊、内閣情報調査室などはアメリカのカウンターパートとよく連携していたが、それは、アメリカの国策を追いかけるためであり、日本のためのものではなかった。それを安倍首相は「日本の政策を持つことの重要性」を理解し、日本がアメリカと本物の仲間、同盟国になるために変えたのだ。

アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、自身のソーシャルメディアで安倍氏をこう追悼している。

「安倍晋三氏がいかに偉大な人物であり、リーダーであったかを知る人は少ないかもしれない。だが、歴史がそれを教えてくれるだろう」

平成は「官僚たちの冬」の時代

証券界と長年、深い関係がある官庁は大蔵省(現在の財務省・金融庁)であった。その官庁にも大きな変化が見られる。財務省官僚のトップである事務次官がセクハラで辞任したり、過度の忖度、さらには公文書の改ざんなど、かつては想像すらできなかったことが起こっている。

昭和が、城山三郎が称したように「官僚たちの夏」の時代だったとすれば、平成は、まぎれもなく「官僚たちの冬」の時代となった。だが、第2次世界大戦後、焼け野原になったわが国の経済復興と高度成長をリードしたのは、まぎれもなく霞が関の優秀な官僚である。

ハーバード大学教授エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で称賛されていた、わが国の「優秀な官僚」は、どこへいってしまったのだろうか?

そこには、「政と官の関係の変容」があるだろう。昭和時代には、政と官は産業界と共に「鉄の三角形」を形成し、それぞれの利益拡大のための「よきパートナー」であった。それが、平成時代になると、経済の低迷や官僚の不祥事を契機に、「脱官僚・政治主導」へと変わっていった。それに拍車を掛けたのが、橋本龍太郎内閣の「中央官庁等改革」である。

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