持続的な成長を実現する「攻め」のリスク管理 特別鼎談/石倉洋子氏 × デロイト トーマツ 企業リスク研究所

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グローバル化の進展などにともない、企業の経営環境が劇的に変化している。特筆すべきは、企業が直面するリスクも多様化していることだ。逆に、持続的な成長のためには、あえてリスクを取る攻めの経営が不可避と言う人もいる。こうした状況下で、日本企業が競争力を高めるためにはどのような取り組みが求められるのか。一橋大学名誉教授の石倉洋子氏と、デロイト トーマツ 企業リスク研究所所長の奥村裕司氏、主席研究員の杉山雅彦氏が話し合った。

不確定要素の増大が
コーポレートガバナンスの重要性を高める

石倉 企業のビジネスを取り巻く環境を見ると、いくつかの大きな変化が起こっています。たとえば、さまざまな意味での境界がなくなっています。ICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)の発展はその要因の一つです。

グローバル化とは国境がなくなることにほかなりません。さらには、産業の垣根もなくなりつつあります。たとえば自動車業界では、クルマのみならず「モビリティ(mobility:移動性)」という大きな概念でとらえられようとしています。

このように、変化が激しく、国内のみならず海外も含むあらゆる企業が競合になるような状況では、将来どちらに向かうべきか判断が難しくなります。不確定要素が増しているのです。こういう時代には、コーポレートガバナンスもますます重要になるでしょう。

デロイト トーマツ
企業リスク研究所 所長
奥村裕司

奥村 企業が積極的に事業戦略を推進しようとすると、常にリスクと向き合うことになります。リスクの有効なコントロールが不可欠です。現在のICTが発展し、グローバル化し事業環境に向き合う企業への最新情報の提供のために、我々は企業リスクとその管理について研究する専門部署として、デロイト トーマツ 企業リスク研究所を、2002年10月に監査法人 トーマツ(現:有限責任監査法人 トーマツ)内に設置しました。当研究所の研究員はいずれも、監査法人 トーマツのリスク管理分野における専門家として、コンサルタントが兼務しています。これらの専門家が、企業が直面するさまざまなリスクを研究するとともに、その研究成果に基づき、季刊誌『企業リスク』を発刊しているほか、Webサイト、セミナーなどを通じて、情報発信を行っています。

杉山 コーポレートガバナンスの体制や取り組みについてもグローバル化が求められています。レギュレーション(規制)への対応もその一つです。米国のFCPA(Foreign Corrupt Practices Act:海外腐敗行為防止法)や英国のBribery Act(賄賂防止法)の域外適用などでは罰金の額も高額で、訴追されると経営に大きなインパクトがあります。

このほか国内では、金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」の検討を進めています。また、経済協力開発機構(OECD)もコーポレートガバナンス原則の改定を進めています。

いずれにしても、グローバリゼーションの中で、日本企業のガバナンスやリスクマネジメントが問われるようになってきていると言えます。

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