日本製鉄とJFE、なぜ業績で明暗が分かれたのか JFEホールディングス副社長に今後の展望を聞く

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――日本製鉄と比べた足元の業績の違いの1つに、彼らのほうが資源権益の保有量が多いという面があります。日本製鉄は2月21日にカナダの原料炭事業会社に出資すると発表しました。JFEが今後、積極的に権益確保に乗り出す考えは。

昔は権益を持っていたが、不採算事業として撤退してきた歴史がある。一方、UAEでの還元鉄(天然ガスで鉄鉱石を還元したもの)プロジェクトやトルコで鉄鉱石採掘やペレット製造事業を進めている。また、オーストラリアの原料炭権益に投資しており順調だ。どこにどう金を振り向けるのかは考えていく。

寺畑雅史(てらはた・まさし)/1959年10月生まれ、1982年一橋大学商学部卒、川崎製鉄入社、2012年JFEHD常務執行役員、2015年同専務執行役員、2019年同副社長(写真:JFEホールディングス提供)

――カーボンニュートラルを目指しているのに原料炭の権益が必要なのでしょうか。

日本の鉄鋼業界は高炉法でカーボンニュートラルをやっていく方針だ。高炉法である以上、原料炭は必要。欧州でもウクライナ戦争によって石炭火力発電所が増えている。2050年には石炭を使わないとなったとしても、直前までは一定の石炭は必要だろう。

すべての鉄を「電炉」で造れない

――高炉は仕組み上、水素だけにはできず石炭が必須であり、CO2排出は避けられません。高炉をやめてしまうことはできませんか。

高炉法はコストも技術も優れている。今の段階でほかに変えられない。全部電炉でやればいいじゃないかと思うかもしれないが、スクラップだけでは造れないものもある。量の問題もある。スクラップだけでは今と同じ鉄の需要はまかなえない。

鉄鉱石から完全水素還元によって還元鉄を造り、電炉を組み合わせるのが理想かもしれないが、日本の電力事情を考えると成り立たない。高炉とCCUS(CO2の回収・貯留・使用)と組み合わせてカーボンニュートラルをやる。

――490億円かけて無方向性電磁鋼板の増産投資を行っていますが、今回500億円の追加投資を決めました。

電気自動車(EV)のモーターで電磁鋼板が必須であり、需要は確実に高まっている。EVシフトは中国やアメリカですごい勢いだ。日本も動き出した。この先も電磁鋼板の需要は確実に高まる。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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