量的引き締めを始めるECBが実は買いまくる国債 イタリア・スペインを救済する毎度の南北問題

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すでにバランスシートを縮小しつつあるECB(欧州中央銀行)だが、経済状況に格差がある南部と北部の対立にどう対処するのかは金融緩和の出口でもネックとなりそうだ。

加盟国の経済状況がバラつくユーロ(写真・Bloomberg)

早いもので2023年も2カ月が経過したが、世界の中央銀行がインフレ抑制のために引き締め路線を歩むという構図は3月、そして4~6月期も基本的には継続しそうな雰囲気が強い。

主要中銀の中ではECB(欧州中央銀行)が3月から保有資産の再投資停止にいよいよ踏み切ることになっており、いわゆる量的引き締め(QT)が始まる。

ちなみに「3月からECBのバランスシート(B/S)が縮小される」という表現が散見されるものの、これは厳密には誤りである。ECBのB/S縮小は既にはっきり始まっている。

前倒し返済要請で一足先に残高縮小

2022年10月27日のECB政策理事会は、ターゲット型長期流動性供給第3弾(TLTRO3)の適用金利に関して、従前の「オペ利用時からの預金ファシリティ金利の平均」を修正し、「11月以降の満期償還もしくは事前償還までの預金ファシリティ金利の平均」とした。

大幅利上げの最中にこの適用金利基準を用いれば当然、既存借入資金のコストが押し上げられる。実質的には前倒し返済の要請であり、意図した通り、2022年11月には2963億ユーロ、翌12月には4475億ユーロ、2023年1月には628億ユーロ、2月には366億ユーロと、4カ月で計8432億ユーロの早期返済が行われている。

TLTRO3の総供給残高(約2.2兆ユーロ)の4割弱が返済されている。これに応じてECBのB/Sもはっきり縮小し始めている。ECBの抱える総資産(約9兆ユーロ)の4分の1がTLTRO3の残高であるため、今後も早期返済を通じたB/S縮小効果(ひいては金利上昇効果)は想定される状況である。

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