中国の「自国産業保護」、日本が向き合う5大課題 官民間の人材面を含めた連携強化が焦眉の課題

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また、政府調達以外の方法を使った技術移転を強制する動きも始まった。最近、中国当局は、化粧品メーカーに対し、原材料や比率を明記した調合表の提出を義務づけ、原料メーカーにも成分比率の開示を求めるよう規制を強化した。化粧品の成分に関する情報は企業秘密であり、この規制強化は企業に独自技術の開示を迫るものである。化粧品の組成情報等が中国側に渡れば、中国企業は同様の製品を作れる。外国企業にとっては、これも事実上の技術移転の強制である。

日本企業に必要なしたたかさ

中国は国産製品を優遇することで国内において完結するサプライチェーンを構築し、中国経済の「安全」を確保する動きを強めている。では、日本企業にはどのような対応が取れるか。中国市場の規模や日中企業間の相互依存性を考えれば、中国市場なくして日本企業の成長はありえないのも現実である。

富士フイルムの撤退は中国への懸念を示唆する(写真:Tomohiro/ OhsumiBloomberg)

1つの選択肢は、中国に製造過程を依存しすぎず、調達先を分散化、多様化することである。上述の富士フイルムの撤退や、ダイキンによる中国に依存しないサプライチェーンの構築等、既に実例はある。また、主たる生産拠点は中国外に移しつつも、「地産地消」の形で中国市場に残るのも選択肢だ。アップルは、アメリカ向けのiPhoneの最終組み立て工程を段階的に中国から撤退させつつ、中国向けは中国企業による委託生産を増やし、中国国内で販売すると見られている。

さらに、競争性が高くない技術、数年で中国が追いつく技術であれば、現地企業として中国で活動することも経営上1つの判断であろう(株式を上場するか否かは別途要検討である)。中国は「一帯一路」を通じて、東南アジア等周辺諸国への中国企業の進出を後押ししている。いわば現地企業として「一帯一路」政策を利用して周辺諸国での市場拡大をするくらいのしたたかさが日本企業にあってもいいのではないか。

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