中国の「自国産業保護」、日本が向き合う5大課題 官民間の人材面を含めた連携強化が焦眉の課題

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2021年夏には、一部の医療機器や観測機器等について、政府調達で国産製品の購入割合を高める方針の内部通知が発出されたと報じられた。中国当局は同通知に言及していないが、ネット上では「内部文書」と書かれた同規則が閲覧できる状態にあり、事実上追認されている。

「安可目録」「信創目録」にせよ2021年の内部通達にせよ、公開されていない通達や、法令に基づかない措置は透明性を欠き、中国で活動する企業の予見可能性を大きく損なう。また2021年の内部通達は、政府調達における中国産製品の購入割合に枠をはめ、さらにその割合を上げていくことで輸入品を排除する方向だ。このような中央の政策は、地方政府が中国企業製品を優先する動きに容易につながり、実際、山西省や深圳市等では、医療機器等の政府調達から外資を排除する通知が出された。

対象となった医療品を製造する外国企業は、中国市場で生き残るためには生産拠点を中国に移すか、中国製部品を増やさざるをえない。そして、これは外国企業に「技術移転を迫られている」との懸念を与えている。

問題の広がり:強制規格、成分表示

政府調達に続き、中国当局は新たな規制(「情報セキュリティー技術設備安全規範」)を導入し、国産化を強制しようとしている。この規制では、政府部門で使われるプリンターやコピー機、スキャナー等について、「安全」上の理由から、中国国内で設計から開発、生産まで完結することを求め、その遵守状況を検査する制度の導入が検討されている。

これが実施されれば、政府調達の対象となるプリンター等は、設計段階を含めた生産の全過程を中国国内で完結する必要があり、外国企業は生産拠点の移転、開発を含めた技術の移転を強いられる。2022年10月に富士フイルムは上海の複合機工場を閉鎖し、中国からの撤退を決定したが、同決定にはこれらの懸念があると思われる。

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