自らを「人生の勝者」と呼ぶ40歳社長夫人の世界観 「毎日がゴルフか旅行」生活を手にした人の生活

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富裕層向けのビジネス経験を通じて、「社長」ではなく「社長夫人」に強烈な憧れを持っていた千鶴さん。賢一さんを逃したら次はない、と痛感していた。勤務先には日本国内の拠点に異動させてほしいと要望。社長から「男ができたんだろう」と見破られつつ帰国に成功し、賢一さんとの結婚を目指した。

しかし、計画通りではない問題が2つ起きた。1つは、賢一さんが「結婚という制度が好きじゃない」とありがちな文句を口にし始めたことだ。

「でも、この国で結婚しないと女の私だけが不利になります。『年も年だし家族になりたい』と説得し、37歳の誕生日にプロポーズしてもらうことにしました」

もう1つの問題はセックスレスだ。交際当初は遠距離恋愛だったために気づかなかったが、日本で一緒に暮らすようになっても賢一さんは行為に至ろうとはしない。そのまま現在に至る。行為をしなくても不妊治療をするという道もあるが、千鶴さんもそれは望んでいない。

変だから好き、こんなぶっとんだ女性は初めて

「彼は『子どもはいなくても構わない』という考えのようです。以前に、『子どもが欲しいなら、あなたはもっと若い女の子を狙えるよ』と言ってみたことがあります。実際、若い子とデートしてみたこともあるそうですが、ネイルの話ばかりで面白くなかったみたいです」

少し誇らしげに語る千鶴さん。かつては海外で富裕層相手の営業職に就いていた自分は、「経済問題を中心にいろんなトピックで日常的にディベートしたい」という賢一さんのニーズを満たしている、という自信があるのだろう。

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「変だから好き、こんなぶっとんだ女性は初めて、と言われています(笑)。国内で過ごしてきた彼にとっては、18歳でアメリカに出てバンクーバーやシンガポールで暮らしてきた私が新鮮に映るのかもしれません」

かつては子どもを作るために結婚をしたいと思った時期もあった千鶴さん。他のすべてをかなえてくれるような賢一さんと結婚できたからこそ、「得られないもの」があることには目をつむることができているのだろう。

そして、ゴルフと旅行と食事を夫婦2人で大いに楽しむ毎日を過ごしている。自殺未遂までした高校生時代の千鶴さんには想像もできなかったような未来だろう。不確実性に満ちているからこそ人生は面白い。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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