「インド留学」日本人学生にとって3つのメリット 最難関インド工科大学ハイデラバード校を視察

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2人に共通する点として、優秀でエネルギッシュなインド人とのネットワークが構築できたこと、インドのマイナス面である社会問題を見ることも良い経験と捉えていることが挙げられます。

またこれも2人とも話していたのですが、インドの大学生は日本が好きな人が一定数いるということです。私も現地のお店でクルタ(インドのシャツ)を購入して着用していると、多くのインド人から一緒に写真を求められ、日本への関心を実感する機会となりました。

世界遺産フマユーン廟で偶然知り合ったインドの若者と筆者(筆者提供)

ただし、現時点では治安や文化、滞在環境、受け入れ体制等において、双方向の行き来の歴史がある欧米の留学とは大きく異なるのも事実です。

条件付きと申し上げたのは、このことが関係しており、留学プログラムのすべてを推奨するのではなく、インドへの留学は次のような段階を経て進行していくのがよいと考えています。

フェーズ1
テーマ性のある短期研修プログラム(ITやアントレプレナーシップ等)
もしくは
IITと協定関係のある大学間(学部間)での中期の交換留学
フェーズ2
IITと協定関係のある大学間(学部間)での長期の交換留学
フェーズ3
短期から長期までの私費留学(1カ月間〜1年間)および中長期の交換留学

段階を上げるためには、安全で衛生的な滞在先の確保、現地24時間サポートや日本人の常駐を含む安全管理の確保、危機管理や留学の専門家による検証、フェーズ1での相互コミュニケーションによる経験値の向上などが必要と考えます。

現在、文部科学省では日本人学生の海外留学と外国人学生の受け入れを行う国際教育連携の取り組みを支援する「大学の世界展開力強化事業」を実施しています。その中の「インド太平洋地域等との大学間交流形成支援」として、インドの大学との交流プログラム支援も実施しており、今後はさらに交流が促進する可能性もあります。

留学生が相互の国を代表するアンバサダーに

IITHのムルティ学長は日本からの留学に関して、次のようにメッセージを寄せています。

「留学生が相互の国を代表するアンバサダーとなることで、長期的に将来の日印の関係性が強固になることでしょう。これからさらに日本から留学生が来ることを期待しています」

今回インドへの視察や関係者へのヒアリングでわかったことは、インドの留学先としてのほかの国にはないオンリーワンの魅力とその可能性の高さでした。

日本とインドの留学による教育的交流が、さらに前進することを願っています。

大川 彰一 留学ソムリエ 代表取締役

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おおかわ しょういち / Shoichi Okawa

日本認定留学カウンセラー協会幹事、TAFE Queensland駐日代表。1970年京都市生まれ。セールス&マーケティングに約10年間携わり、カナダに渡航。帰国後、留学カウンセラーとして4年間で約1000名以上の留学やワーキングホリデーに関わる。その後、米国の教育系NPOのアジア統括ディレクターとして約6年間、グローバル人材育成に尽力。海外インターンシップを大学の単位認定科目としての導入に成功、東北復興プロジェクト、アジアの国際協力プログラム開発にも携わる。現在は「留学ソムリエ®︎」として国際教育事業コンサルティングや留学の情報を発信。留学ソムリエの詳細はHPFacebookから。著書に『オトナ留学のススメ』(辰巳出版)。

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