「韓国産アサリ」国産と偽わざるを得ない深刻事情 数十年間にわたり「産地偽装」が常態化していた

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周りも輸入アサリを「国産」と表示して取引していたことから、自分だけ適切に「外国産」と表示しようにも、それでは売れなくなってしまうと考えざるをえない状況だったわけです。

――どうしてこのような事態に陥っていたのでしょうか?

その原因の1つとして、いわゆる「長いところルール」による運用があります。

「長いところルール」とは、アサリなどの水産物を複数の産地で育成した場合、最も育成期間が長い場所を原産地として表示するという考え方です。

この考え方による運用の下、育成期間を偽り、外国産アサリを「国産アサリ」と偽る取引が繰り返されてきたのです。

「国内での育成期間が長い」と偽装されてきた 

――具体的にはどのような「偽装」がおこなわれていたのでしょうか?

2010年(平成22年)にも、「食品表示に関するQ&A」が公表されて、アサリの稚貝を輸入し、又は国内から移植して繁殖させ、成貝を漁獲する場合、当該アサリの最も育成期間が長い産地を表示することとし、その場所での育成期間が長いことを証明できる必要があるという考え方が示されました。

しかし、その後も、育成期間を偽装した書類などで、国内での育成期間が海外での育成期間より長いと偽って、「国産」と表示する状況が続きました。偽装の方法には、こうした偽装書類の作成に加え、責任主体を曖昧にするため取引過程に複数の架空業者(輸入業者や蓄養業者)が介在しているかのように装うケースもありました。

――法制度はそのままだったのでしょうか?

アサリの産地偽装は、たびたび問題視されてきたこともあり、2022年(令和4年)3月、食品表示法に基づくルールが改正され、輸入アサリは、日本の海に短期間撒く「蓄養」をしただけの場合には、「外国産」と表示するものとし、例外として、国内において1年半以上育成し、その根拠書類(通関証明等)を保存している場合には、「国産」として表示できるものとされました。

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