雨宮副総裁「現段階でさらなるYCC柔軟化不必要」 安定的な2%の物価上昇目標達成にはまだ距離

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日本銀行の雨宮正佳副総裁は10日、現行のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策について「現段階ではさらなる柔軟化が必要とは考えていない」と述べた。衆院財務金融委員会で前原誠司氏(国民民主)の質問に答えた。

雨宮氏は、長期金利も誘導対象とするYCCを異例な政策とし、「やはり副作用もある」と認めた。その上で、YCCの運営に際しては副作用を緩和しながら効果が出る工夫が必要と指摘。今後も「効果と副作用のバランスを勘案しながら、最善の政策効果が出るような努力を続けていきたい」との考えを示した。

日銀は12月の金融政策決定会合でYCCにおける長期金利(10年国債利回り)の許容変動幅を従来の上下0.25%から0.5%に拡大する金融緩和策の修正を決めた。1月18日の会合では金融政策を維持したものの、物価上昇や4月の黒田東彦総裁の任期満了を控えて市場には一段の政策修正への思惑が根強い。

雨宮正佳日銀副総裁Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

YCCの副作用である市場機能の低下の改善を目的とした運用見直し後も、市場には「まだゆがみが残っている」と語った。それでも市場機能は「改善に向かっている」とし、拡充した共通担保資金供給オペなどを活用しながら、「現段階では機動的な市場調節運営を続けることで、改善の動きを見守っていくことが重要だと考えている」と語った。

出口は時期尚早

雨宮氏は、日銀はあくまで賃金上昇を伴った持続的・安定的な2%の物価安定目標の実現を目指していると指摘。その達成までにはまだ距離があると述べ、金融政策運営は「基本的に現在の金融緩和政策を維持することが適当だと考えている」との見解を示した。

2%の物価安定目標を掲げて金融政策を行ってきたことによって「わが国の経済・物価は着実に改善し、デフレではない状態を実現できるというところまできた」とも述べ、これまでの政策は「適切であった」と評価した。

世界の中銀でも異例の上場投資信託(ETF)の買い入れについては、人為的な株価の操作や押し上げを目指しているわけではないとし、危機時のリスクプレミアムの抑制など「金融環境の改善に貢献してきた」との認識を示した。

その上で、物価安定目標の実現になお時間を要する状況において「具体的なETFの処理も含めた出口政策について議論するのは時期尚早だ」と主張。物価目標の実現が近づけば「出口に向けた戦略や方針についてきっちり金融政策決定会合で議論し、適切にコミュニケーションを図っていきたい」と語った。

ブルームバーグが1月に実施した調査で、雨宮氏は黒田総裁の後任の最有力候補に挙がっていたが、日本経済新聞など複数のメディアは10日夕、政府が次期総裁に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事を固めたと報じた。副総裁には内田真一日銀理事、氷見野良三前金融庁長官を起用するとしている。

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--取材協力:、、.

(発言の詳細を追加して更新しました)

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著者:伊藤純夫

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