「BEVで大苦戦」する日系メーカーが勝ち残る条件 中国市場でハッキリ分かれた「日本車の明暗」

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2022年に発表されたインフィニティのSUVクーペ「QX55」(写真:INFINITY)

中国の新車販売は、新型コロナウイルスの感染が全国的に広がった影響から2022年の春先に大きく落ち込んだが、中国政府が6月に打ち出した乗用車購入税の減税措置や消費促進政策の効果などにより、予想以上の回復を示している。

一方で、中国の自動車市場は電気自動車(BEV)を中心とする新エネルギー車(NEV)シフトが進行する中、クルマの消費嗜好が変化していることもあいまって、大きな転換期の最中にあることも事実だ。

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市場の変調は、日系を含む外資系メーカーの中国事業に影響を与えはじめ、日本車の中でも明暗が大きく分かれてきた。その動向は、日系サプライヤーをはじめ自動車業界から強い関心が寄せられている。

本稿では、中国市場で生じた日本車の変化と課題を浮き彫りにしていく。

一様に苦戦する海外メーカー

 中国の新車販売は、2022年に前年比2.1%増の2686万台となり2年連続でプラス成長を維持したものの、ピークの2017年(2887万台)の水準への盛り返しは遠のくばかりだ。

コロナ禍で“初めてのクルマ”を買おうとしていた人たちの収入が減り、そうした層をメインターゲットする自動車メーカーが苦戦。すでにクルマを所有している人たちに買い替えでは、安全性や信頼性、ブランド力が重視される傾向にあり、新車需要はハイエンド車へとシフトしつつある。

トヨタが中国で販売する「カローラ」(写真:トヨタ自動車)

ローエンド車を中心とする韓国の現代自動車(ヒョンデ)は、中国事業の低迷を受け、北京工場の売却を余儀なくされた。韓国車は技術力で中国地場ブランド車に差を縮められ、またブランド力で日系・ドイツ系車に及ばない状況だ。

しかし、欧米大手自動車メーカー、ステランティス傘下のFCAやフランスのルノーも中国で乗用車の合弁生産を撤退し、GMやフォードなどアメリカ系でも苦戦が目立つ。欧米車は、これまでデザイン性やブランドコンセプトを差別化要因としてきたが、今やそれだけでは強みとならなくなっているのだ。

長年、中国の乗用車市場で首位を独走してきたドイツ・フォルクスワーゲンも、販売台数は前年比4%減と、3年連続でのマイナス成長となった。

近年、中国では日系自動車メーカーが価格競争力を意識しながら、兄弟車戦略によりセダン/SUVの両市場で同時躍進。この戦略により、地域ごとに消費者層の拡大を実現した。

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