富士フイルム、iPSベンチャー買収の"深謀" 買収の狙いは「再生医療」だけではない

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米国のiPS細胞ベンチャー「CDI」の買収を決めた、富士フイルムの本社(撮影:尾形文繁)

「今回の買収は、富士フイルムの再生医療事業が次のステージへ行くための重要なステップだ」――。富士フイルムホールディングスが3月30日に開いた買収発表会見で、古森重隆会長CEOはその意義をこう語った。

5月上旬までをメドに富士フイルムが買収するのは、iPS細胞を開発・製造する米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)。2004年に設立され、2013年7月に米NASDAQに上場したバイオベンチャーだ。独自の自動製造技術を武器に、心筋や神経などのiPS細胞を医療機関や研究機関向けに製造・販売している。

CDIは「創薬支援」に強み

「次のステージに行くための重要なステップ」と古森会長

iPS細胞の医療応用というと、一般的には同細胞から作った心臓や血管を人体に移植する「再生医療」のイメージが強い。だが、CDIが得意とする分野はそれとは異なる。同社が強みとするのは、ずばり「創薬支援」だ。

競合に当たる日本のベンチャー、リプロセルの横山周史社長は「CDIは創薬応用にフォーカスした技術力のある会社。iPS細胞による創薬支援は世界的に製薬会社のニーズが非常に高い」と、そのポテンシャルを評価する。富士フイルムの戸田雄三常務も「(iPS細胞を使った創薬支援で)薬づくりの革命が起きる」と期待を寄せる。

薬を作るプロセスの初期では、数ある化学物質の中から医療効果があるものをスクリーニングしていく。このプロセスでは人体実験を行うことができないため、現在は動物実験で代替されている。とはいえ、動物と人間では身体の構造が違うため、動物に効く薬品が人間に効くとは限らない。さらに、遺伝子疾患やアルツハイマー病など、動物で病状を再現するのが極めて難しい疾患もある。

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