ベンチャーブームに浮かれる面々にモノ申す サイバー藤田晋社長が警告する「緊張の緩み」

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(撮影:尾形 文繁)
週刊東洋経済4月4日号の第3特集では、合計10ページの「ベンチャー投資の舞台裏」を掲載した。ベンチャー企業の資金調達額やIPO(新規株式公開)件数が増え、久方ぶりにベンチャー業界は盛り上がっている。一方でスマホゲーム会社gumi(グミ)のように、期待されながらIPO直後に業績を下方修正する”残念”なベンチャーも散見される。
ソフトバンク・ベンチャーズ・コリアのグレッグ・ムーンCEO(「孫正義氏の"懐刀"が明かす最強の投資術」)に続くインタビューの拡大版は、ネット広告やスマホゲーム大手、サイバーエージェントの藤田晋社長だ。藤田社長は過去17年間、変化の激しいネット業界を生き抜いてきた。長年、本業以外にベンチャー投資も手掛けており、これまで168社に投資したうち25社がIPO(新規株式公開)をしている。同氏はベンチャー投資をめぐる現在の盛り上がりをどのように見ているのか。

 

――昨年秋に出資枠100億円の「藤田ファンド」を凍結した。

今の状況は明らかにバブル。起業家には「今はチャンスだからぜひ調達したほうがいい」とアドバイスするが、投資家から見ると、はっきり言ってばかばかしい。起業家も周囲の調達額が大きいから「こんなもんでしょう」みたいな感じで緊張感が緩んでしまっている。うちの会社を辞めて起業した人が、1年も経たず、まだほとんど売り上げも立ってないのに10億円近い時価で資金調達の相談にきたときは驚いた。

大きな額を調達した分、リターンを出してつじつまを合わせられるなら急成長できるチャンスだし、気が狂ったように頑張る覚悟のある人ならいい。でもその年齢、規模で、多額の資金を集めることに対する洒落にならなさを痛感してやっているのだろうか。現実に、実業で数億円の投資に見合う利益を出すのは並大抵のことではない。

――上場後に株価が急落した、スマートフォンゲーム会社のgumi(グミ)をどう見ていますか?

gumiの國光(宏尚社長)さんは、これで萎縮して赤字にビビったりしなければ、ものすごく成長する可能性が出てくると思う。彼もたまたま自分の描いた構想通りにならなかったからああなっているだけで、誰かをだまそうと思ってやっているわけではない。ああした痛い目にあう経験は、はっきり言って成長するチャンス。赤字を意識し始めると、今度は小さくまとまってしまう。

――起業家としての資質が試される。

やっぱり胆力、強い心根があるか。株の下落も短期的なものかもしれない。ただ大変そうで、何だか懐かしい感じがした。

――既視感がある?

過去2~3回は見てきた。ライブドア事件以来、萎縮している起業家は多かった。僕もそうだったが楽天の三木谷(浩史社長)さんも、叩かれてなんぼみたいなところが起業家にはある。優等生では大した起業家になれない。

いい会社には外部からの関与は必要ない

――最近の起業家に変化を感じる点はありますか。

たとえばgumiの國光さんは、ガツガツしていて面白い。そういう人は化ける可能性を感じる。堀江(貴文)さん以降、ちょっと若い起業家が小さくまとまっているっていうのを、3月の(起業家が集まるイベントである)IVS(Infinity Ventures Summit)のセッションで僕がモデレーターとなって若い起業家相手に話をした。その様子を取り上げた記事を事前チェックしたら、みんな削除・修正しまくっていて、なんか小さいなと思った。僕のコメントまで削除されちゃって(笑)。書いたら面白いのに、叩かれたくないんでしょう、やっぱり。

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