「お伊勢参り」の参拝者数と株価の意外な関係 伊勢神宮の参拝者数と年間の株価を分析

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図中の〇印から、2020年が13万人となっています。これは、その前の2年間となる、2018年と2019年の1月の参拝者数の平均に比べて、2020年1月の参拝者数は13万人増えたことを表しています。

ピンクの棒グラフは過去2年間の1月の平均と比べて増えたか、減ったかをグラフ化したものです。そして同年(2020年)の日経平均株価(折れ線グラフ)は年間で3787円上昇しました。2020年は“1月の参拝客が増えて、その年の株価が上昇した”という関係が示されました。

グラフを見ると、完全一致とまではいきませんが、おおむね参拝者数と日経平均株価のグラフは連動しています。つまり、“毎年、1月の伊勢神宮の参拝者数が増えると、その年の株価は上昇する傾向”があることがわかります。

伊勢神宮の参拝客が増えるとなぜ株高になる?

なぜ、1月の伊勢神宮の参拝客が増えると、株高となるのでしょうか。これには大きな理由が2つあると考えています。第1に初詣に遠出する人々の気持ちや経済的な余裕が背後にあるというものです。「今年は、いつもの近所での初詣でなく、お伊勢参りをしてみよう」と考えるわけですから、なにかと忙しかったり、それにご入用も多そうな1月にもかかわらず、人々に余裕があるからこそ、旅に出かけ“られる”のかもしれません。そこそこ金銭面に余裕がある人が増えれば、株式に投資してみよう考える人も増えて、株式好需給による株高が期待されます。

第2の理由は、旅行の経済効果にも関係します。お伊勢参りは古来、庶民にとって旅の代表でした。1月にお伊勢参りする人が増えるということは、お伊勢参りに限らず、その年に旅行を希望する人が増えることを示しているのかもしれません。国内の旅行者が増えれば、それが国内経済を潤す要因にもなり、株高と関係してくるでしょう。

さて、本年の1月の伊勢神宮の参拝者数はどうなるのでしょうか。神宮司庁によるデータが伊勢市の観光情報ページを通じて、2月中にも発表される見込みです。しかし、それを待たなくても、ある程度の予想はできると見られます。神宮司庁の発表では、今年の正月三が日に伊勢神宮を参拝した人は37万5379人となり、昨年より4万3130人増えたとのことです。三が日の参拝者数が去年と比べて13%増えていることから、コロナ禍にあった過去2年間の1月平均と比べて、今年の参拝者数は増加する可能性が高いと見られます。

コロナ禍からの経済、社会の回復で、今年は旅行を希望する人々も増えており、その経済効果も期待されます。こうした世情を映して、1月の伊勢神宮の参拝者数の増加と、今年の株高が期待されます。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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