日本人50歳女性「27%が生涯子供いない」の示す事 未婚、貧困、子育て難、不安、価値観の多様化

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日本では一生結婚したことがない「生涯未婚率」がどんどん上昇している。生涯未婚率とは、統計的には50歳時の男女が一度も結婚しない状態を数値化した指標だ。日本の場合、2020年の段階で男性が28.3%、女性は17.8%に達しており、子供をもうける人も当然減ってくる。1980年当時、男性の生涯未婚率(50歳時)は2.60%(厚生省国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」平成7年より)、女性は4.45%(同)にすぎなかった。ほとんどの男女が結婚した頃から40年で状況は大きく変わった。

「収入や雇用の不安定さ」は生涯未婚の主因の1つに挙げられている。一方、発展途上国で出生数が大きく伸びている国では、貧困が出生数低下の原因にはならない。しかし、ある程度経済が発展してくると、結婚生活の延長線上にある出産、子育て、老後が大きく関係して、結局子供を作ることに二の足を踏んでしまう人が多くなる。

正社員と非正社員の格差も指摘

とりわけ、近年指摘されている問題が「正社員(正職員)と非規社員(非常勤職員)の格差」である。40~44歳の非正規社員の男性の未婚率は70.1%(2020年、「非正規男性6割が未婚「普通の家族」は終わりつつある」/日経×woman、/2022年7月22日配信)というデータもある。

連合(日本労働組合総連合会)が2022年3月に発表した調査によると、非正社員として働く女性に対するインターネット調査では、初めて就いた仕事が正社員では「配偶者がいる:63.6%」「子供がいる:57.7%」に対して、同じく非正社員の場合は「配偶者がいる:34.1%」「子供がいる:33.2%」だった。初めて就く仕事が正社員か非正社員かで、大きな差が出る。

とはいえ、そもそも正社員であったとしても日本の賃金が一向に上昇していないのもネックなのだろう。今や日本は先進国の中では、最下位レベルに近い収入しか得られない社会になっている。OECDが発表した2021年の平均賃金をドルベースで見ると、韓国やスロベニア、リトアニアといった中東欧諸国にも抜かれている。正社員、非正社員にかかわらず、未婚の男女が急増したことの遠因にありそうだ。

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