岸田首相の大勝負、コロナ「5類移行」の危険な賭け 時宜を得た方針転換?政府対策本部も廃止へ

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そうした経過の中、岸田首相は就任時から「尾身会長をコロナ対策の前面に出すべきではない」(側近)と判断。それまでの慣例だった政府のコロナ対策決定・変更時の首相会見での尾身氏の説明を除外した。

もちろん、岸田首相は表向き「つねに専門家の意見を聞いて判断している」と繰り返している。ただ実際は、尾身氏に対してひそかに「余計な発言は控えてほしい」と牽制するなど、政権としての“尾身外し”を徹底。後藤茂之コロナ担当相は20日、「『5類』引き下げに伴い政府の対策本部は廃止になる」と明言した。

国民の不安を和らげ、政権浮揚につなげる狙い

そもそも、岸田政権にとって、年明けの時点での最大の難問がコロナ禍への対応だった。だからこそ、昨秋からコロナ対策の早期転換を模索してきた岸田首相は、年明け早々に「政府主導で将来展望を示す」ことで国民の不安を和らげ、政権浮揚につなげようとしたのだ。

ただ、今後も感染状況の高止まりが続き、年度末前後に大規模な第9波の到来ともなれば、今回の決断が「重大な政治責任として首相を追い詰める」(自民長老)ことは間違いない。

このため岸田首相サイドも「当面は、祈るような思いで感染状況や死者数を見守るしかない」(側近)と肩をすくめるばかりだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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