世界一のレストラン「ノーマ閉店」が与えた衝撃 過酷な労働と激しい職場文化の高級店は限界

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ノーマのエントランス(2016年・筆者撮影)
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2023年1月10日、コペンハーゲンのレストラン「ノーマ(noma)」が、2024年末で通常営業を終えると発表した。開業以来20年間、「世界のベストレストラン50」における5度の世界1位獲得、ミシュラン3つ星と華々しい称号を得て、その料理やレストランのあり方においても世界にさまざまな影響を与え続けたレストランが、一つの区切りを迎える。

「noma3.0」と題した公式サイトの告知には「ノーマであり続けるために変わる必要がある」として今後の予定が記されている。レストランは2025年から「広いテストキッチンと巨大なラボ(実験室)」として研究や開発が主体になり、そしてこれまでと同様に世界に出かけ、「シーズン」と呼ばれる期間限定営業を行うという。

ノーマがこれまで注目を集めてきた理由

ノーマはコペンハーゲン中心部ウォーターフロント地区に1800年代に建てられた大きな倉庫の中に2003年開店した。当時25歳の料理人レネ・レゼピと実業家のクラウス・マイヤーによって、世界中の人々をデンマークに呼び寄せるレストランになった。

レゼピはコペンハーゲン生まれ。幼少期をマケドニアで過ごし、15歳で料理の道に入ったのち、スペインの「エル・ブリ」などの世界的レストランで腕を磨いた。

ノーマの名前を一躍有名にしたのは、2010年、イギリスの雑誌社が毎年行っている「世界のベストレストラン50」のランキングで初めて世界1位になったことだ。このあと世界中から予約が殺到するようになり、ノーマは「予約が最も取りにくいレストラン」の一軒になった。

2012年5月の料理。地元の松の柔らかい新芽も食材として登場した(筆者撮影)

ノーマの料理は開業当初から革新的だった。厳しい自然環境から食材に乏しい北欧の地で、北欧の食材だけを用いて、地元の松の新芽や採集された色とりどりの花から繊細で軽やかな料理が生み出される。その清新さ、革新性は人々を驚かせた。

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