家族がいた2人、出会って32年で「同性婚」するまで 家族やお金、将来の問題をどう解決してきたか

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父を看取りながら、いつか自分がこの世を去る時のことを想像するようになった。「女性2人のカップルである私たちは、一緒に暮らしてはいても、法律婚の夫婦のように法律で守られているわけではない。もし私に何かあったら、ジューリーの生活が心配。彼女が何の問題もなく、私の家や財産を自動的に相続できるようにしたいと思った」。

そこで2人は53歳という年齢で、正式な遺言を作ることにした。

まず、自宅、不動産、車、銀行口座のすべての名義を共同名義に変更した。そして、2人のどちらかが先に死去した場合、残されたほうが財産をすべて相続し、4人いる子供たちにはその時点では財産を相続しないことを明記した。その後、2人ともが亡くなった時点で、残った財産を、4人の子供たちに1/4ずつ均等に配分する、と決めた。

遺言書がない場合、ウィルコックスさんが先に死去すると、彼女の財産は彼女の血縁である実子2人が相続することになり、同居はしていても家族ではないネイシさんの相続分はゼロだ。それを避けたかったのと、自分たちカップルが亡くなった時点での、4人の子供たちの相続権利を完全に平等にしたかった。

「医療担当」「財産分割監督責任者」を任命

さらに、ユニークな特筆事項2点も明記した。1つ目は、ウィルコックスさんの長男とネイシさんの長女を「医療担当の最終意思決定者」チームとして任命する、というものだ。「同い年の私たちは、将来、同時期に認知症や重病になる可能性もある。その場合、自身やパートナーの医療上の意思決定ができないという事態も十分起こりうる」とウィルコックスさんは言う。

2人が意思決定できない時に、どんな医療を選択するか、延命はどこまでするかなど、子供たちの間で意見が分かれた場合の最終決定をする役割をこのチームに託すのだ。また、遺書には「呼吸が止まり、心停止した場合は、蘇生しないでほしい」という「DNR(do not resuscitate)」と呼ばれる一文も、あらかじめ、はっきり明記した。

特筆事項の2つ目は、ウィルコックスさんの次女とネイシさんの次女を「財産分割監督責任者」チームとして任命したことだ。ウィルコックスさんとネイシさんの死後、遺言の取り決め通りに相続が行われるよう監督するのが、このチームの役目だ。

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