アマゾンが「新配達プログラム」を打ち出す事情 インド配達網も手掛けた事業本部長を直撃

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①ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便など宅配便の大手各社。②地域限定で配送を行う「デリバリープロバイダ」と呼ばれる配送会社。③2019年に開始した、アマゾンが直接個人ドライバーに委託する「アマゾンフレックス」。これら3つのうち、どの方法が一番早く届けられるか、システムで判断し荷物を振り分けているという。

増え続ける荷物量に対応して、デリバリープロバイダ各社は配達能力の増強を進めているが、そう簡単ではない。人手不足を背景にドライバーを取り合っており、車両を増やそうにも増やせない実情があるからだ。

配達能力と配送効率の向上を狙う

ハブプログラムは、配達能力と同時に配達効率の向上も狙っている。入り組んだ商店街やタワーマンションなどの高い建物は、配達効率が低下する原因となる。今回、そうした場所については、地元をよく知るオーナーたちに自転車や徒歩で配達してもらうことを想定しているようだ。こうした新たな配達の担い手ができれば、地域の配達を担うデリバリープロバイダの配送効率の引き上げにもつながる。

あるデリバリープロバイダ幹部によれば、ドライバーが配達できるのは1日平均150~160個程度だが、アマゾンはその2割アップぐらいを要求してくるという。ただ、荷物を多く積めば時間もかかり、厳しい労働環境となるリスクもある。「ハブプログラムは、そうしたわれわれの声も考慮されているのではないか」(同)。

コロナ禍で一段と伸びたEC需要は、人々の外出が増えても高水準で推移している。ハブプログラムを駆使し、全体の配達能力と効率を引き上げていくことが、アマゾンの当面の重点課題となりそうだ。

ハブプログラムによって、全体の配達効率をどう上げていくのか。アマゾンジャパンの配達を統括するアマゾンロジスティクスの事業本部長、アヴァニシュ・ナライン・シング氏に聞いた。
Awanish Narain Singh/PepsiCo社で18 年間セールス、マーケティングなどを担当し、その後Nokiaに入社。2015 年にAmazonに入社し、営業・チャネル戦略、ブランド管理・消費者調査、サプライチェーン・顧客管理などを担当。インドでラストマイル配送ネットワークの拡大に注力。2018年に日本のアマゾン・ロジスティクスのカントリー・ディレクターに着任(撮影:尾形文繁)

――ハブプログラムを日本でも始めた背景を教えてください。

地域のビジネスのオーナーが自由な時間で配達でき、投資も必要なく、今の経営資源で副業ができる。3カ国で展開しているが、市場調査で起業家や中小企業の数などを確認し、日本も非常に適していると判断した。実証実験でよいフィードバックが寄せられたことも大きい。

――コロナ禍で実証実験を進めた理由は?

正直に言って、2019年初頭まではデリバリーステーション(ドライバーに荷物を引き渡し、各所へ配送するための拠点)が1カ所しかなかった。

その後急ピッチで投資を進め、現在では全国で45カ所まで拡大した。このサービスはインフラが重要。インフラの整備によって、中小オーナーを支援し、安全に収入を増やせるプログラムを提供できるようになっている。

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