「岸田首相はすでに腹をくくった」と言える理由 23年前半の岸田内閣の前途と日銀人事を考える

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ということで、「2023年5月までは仕方がない」と衆目が一致する岸田内閣なのであるが、このところの迷走はいささか目に余るものがある。「聞く力」を標榜し、何をするにも「検討し……」と言っていたのに、突如として防衛増税を言い出したりする。先の臨時国会中には実に閣僚3人のクビが飛んだが、世が世なら倒閣ものであろう。

永田町でもっとも信頼度が高いとされるNHKの世論調査のデータを見てみよう 。最新12月の内閣支持率は36%と前月比+3%となったが、すでに菅義偉前内閣の末期の水準(29~33%)と大差ないところまで沈んでいる。

当面、国政選挙がないということで「岸田おろし」には至らないのだが、2023年4月には統一地方選挙がある。ここで与党が大敗するようなことがあれば、いわゆる「サミット花道論」(5月にサミットが終わったら、岸田総理にお引き取りいただくシナリオ)が急浮上するだろう。逆に言えば、5月以前に政変が起きて首相交代という確率は低いことになる。

岸田内閣のキーパーソンは誰か

あらためてNHKの世論調査グラフを見ると、支持率は2022年7月の59%を頂点に急落していることがわかる。7月8日に安倍晋三元首相が凶弾に倒れてから、急に政権が不安定化していることがわかる。安倍「国葬」の是非をめぐって国論が割れたから、というのが大方の理解であるけれども、実際は構造的な問題なのではないかと思うのである。

自民党には「楕円の理論」と呼ばれるものがある。もともと1955年に保守大合同があり、吉田茂の自由党と鳩山一郎の日本民主党が合併してできたのがいまの自由民主党である。

前者はリベラル、経済重視、軽武装のハト派であり、後者は保守、安全保障重視、自主憲法制定のタカ派であった。楕円のように2つの焦点があるからこそ、自民党は長期安定政権を維持してきた。ひとつの内閣が行き詰まったら、今度は党内の反主流派が政権を担う、という形で「疑似政権交代」を行うことができたからだ。

そして今日、旧自由党(党内左派)の伝統を継ぐのが宏池会(岸田派)と平成研(茂木派)、旧日本民主党(党内右派)の衣鉢(いはつ)を継ぐのが清和会(安倍派)ということになっている。

現在の岸田内閣は、党内第4派閥である岸田派を、第3派閥の麻生派と第2派閥の茂木派が支えることで成立している。だから麻生太郎副総理、茂木敏充幹事長がキーパーソンとなるわけだ。

次ページ「楕円の2つの焦点の調和」が崩れた
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