「管理職になりたい日本人」極端に少ない根本理由 職場コミュニティからはみ出てもいいことない

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調査結果を見るかぎり、男性より女性のほうが嫉妬を強く意識していることがわかる。それは、男性と女性の属するコミュニティの違いを反映しているのではなかろうか。

日本ではまだビジネスで成功を遂げた人も、管理職の数も女性は男性に比べて少ない。厚生労働省が2021年に行った「雇用均等基本調査」によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.3%で、部長相当職になると7.8%と一割にも届かない。そのため管理職になると、仕事だけでなく人間関係においても男性中心の社会に入っていかなければならず、孤立感を味わうおそれがある。

女性にとって嫉妬が出世の「足かせ」に

一方では職場の仲良しグループのような現在属しているコミュニティから切り離され、仲間を失うかもしれない。

女性に家事や育児の負担が偏っている現状を考えたら、管理職になって仕事が忙しくなり、家事や育児へのしわ寄せや肉体的・精神的な負担が増すのは避けたいと思うのは当然かもしれない。それに加え人間関係の問題が、女性にとって管理職昇進の足かせになっているのだ。

嫉妬や孤立、人間関係の悪化などは外から直接見えないので対策を打つことが難しい。しかし、それが「負の報酬」として強く意識されている以上、これまでのように女性活躍を支援するような制度を設け、管理職の門戸を広げるだけでは十分とはいえないのではないか。

共同体の圧力によって社員の前向きな行動や挑戦が妨げられるケースはほかにもある。「いくら正しいと思っても、突っ走ったら損!」。それを強いメッセージとして発信する場面がある。

データの改ざん、ミスの隠蔽、作業の手抜き、偽装表示といった企業不祥事。その多くは会社組織という閉ざされた共同体のなかで起きるので、早期に発見して対策を打つには内部者の協力が欠かせない。そこで不正摘発の切り札として導入されたのが、いわゆる内部通報制度である。2004年に制定された「公益通報者保護法」では、内部通報者の解雇や降格など不利益な取り扱いをすることを禁じた。

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