政局装う猿芝居?「防衛増税」時期先送りの不可解 高市氏らが反発したが、結局1週間あまりで収束

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一連の騒動の経過を振り返ると、「自民党税調の平場の論議で、岸田首相の『防衛増税』を攻撃したのはいわゆる“安倍チルドレン”ばかり」(自民幹部)。「宮沢氏がかねて用意の妥協案で譲歩すると、あっという間に退散した」(岸田派若手)のが実態ともみえる。

安倍政権時代は「安倍チルドレンの筆頭格」とされた稲田朋美元防衛相は、騒動の渦中の12日午後に官邸で岸田首相と会った後、記者団に「(防衛財源は)安定財源である必要がある。1兆円について国民に薄く広く、税の負担のお願いを検討する首相の方針は正しい」と防衛増税を支持してみせるなど、“安倍シンパ”の面々も立場はバラバラだった。

国民の怒りは収まっていない

萩生田、西村両氏は党内最大派閥・安倍派の次期会長候補で、「将来の総理総裁を目指すライバル同士」(安倍派若手)。また、高市氏は「ポスト岸田」に強い意欲をにじませ、ネット上では「高市頑張れ」との書き込みがあふれたのも事実だ。

こうした状況から自民党内でも「結局、安倍氏を信奉する“遺児”たちのアピール合戦にしかみえない」(自民長老)との声が続出。永田町では「安倍派の内部闘争を見越した岸田首相らの狡猾なガス抜き作戦だったのでは」(同)との皮肉な見方も広がっている。

ただ「最大の問題は、国民の怒りが収まっていないこと」(閣僚経験者)と警告する向きもある。騒動直後の大手紙の世論調査では、いったんは下げ止まった内閣支持率が再下落して政権維持の危険水域に突入した。それだけに岸田首相の苦境はまだまだ続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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