海外鉄道旅、筆者が被害に遭った「危険な手口」 国別の治安レベルとは尺度がまったく違う

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安全な国、危険な国は流動的でもある。経済発展などで安全度が増した国もあれば、危険になった国も多い。ミャンマーは日本の中古鉄道車両が走ることで日本の鉄道ファンに人気であったが、治安はよかったのに、自由度が急減したため行きにくくなった国である。逆に、民主化によって国民は自由を得たものの、治安が悪くなった国も多い。

筆者はかつて南アフリカ、ジンバブエ、ベネズエラなどでも鉄道を利用したが、現在は治安悪化で鉄道旅行どころではなくなっているという。

夜のティワナは危険

南アフリカは人種隔離政策撤廃以降、近郊列車に外国人が乗ることが難しい状況になったという。ベネズエラはかつて産油国として南米で最も潤っており、首都カラカスにはお洒落なメトロが走っていたが、反米政権になってからは極度のインフレなどから治安が悪化、世界で最も危険な国に数えられるようになった。ジンバブエも鉄道の旅が楽しい国であったが、極度のインフレが庶民の生活を圧迫、治安が悪化した。

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同じ国でも治安の地図が変化した国もある。かつてのメキシコはアメリカに近い北部ほど経済発展し安全であったが、現在は逆になった。貧しいメキシコ南部やメキシコ以南の中米各国から、人々が仕事を求めて陸路アメリカを目指すのだが、簡単にはアメリカに入れず、けっきょくメキシコ北部にとどまってしまい、治安が悪化している。

アメリカと接するティワナは、アメリカのサンディエゴからトラムに乗ってボーダーへ、歩いて国境を越え、気軽にメキシコが楽しめる場所で、アメリカ旅行にちょっとだけメキシコを味わうのにいい町であった。しかし、現在は治安が悪化、アメリカ人も「夜のティワナは危険」と、日帰りしかしなくなったという。

海外鉄道旅行は楽しい場面が多い反面、危険な場面も多々ある。一般的な安全情報と駅や車内での事情が異なることも多いので、鉄道旅行に特化した犯罪の手口を知っておくことも必要であろう。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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