JR特急料金「最繁忙期」、各社で時期が違う不思議 2023年導入の東海など4社は東日本と日程が別

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JR東日本とJR東海など4社では「カレンダー」がだいぶ異なるが、そもそも、なぜ統一しなかったのか。最繁忙期などの日程は、JRグループ全体で同じにしたほうがわかりやすいはずだ。とくにJR東日本とその他のJR各社をまたぐ列車は複雑になる。特急「しなの」や「サンライズ出雲・瀬戸」はJR東日本区間も走るものの、特急料金はJR東海や西日本のカレンダーで算出することになる。

背景には各社での利用実態の違いがある。JR東日本によると、お盆などの3大繁忙期を含め、JR旅客6社の列車がすべて同じ繁忙期・閑散期のカレンダーどおりの利用状況というわけではない。JR東海も同様の回答だった。それゆえに東海道・山陽・九州新幹線など、比較的乗客の利用動向が近いことを理由として、JR東海やJR西日本(北陸新幹線以外)・JR四国・JR九州の4社で見直しを行ったのだ。

東海が「最繁忙期」細かく設定する理由

ではなぜ、JR東海などは最繁忙期・繁忙期の設定が細かいのか。JR東海によると、お盆・年末年始期間の中でピークとなる日の需要のみ平準化できれば、そのほかの日程は輸送力によって十分に吸収できると考えているからだという。東海道新幹線は「のぞみ12本ダイヤ」の実施により、以前より輸送力が増強されている。

東海道新幹線東京駅
東海道新幹線は1時間に最大12本の「のぞみ」を運転できる「のぞみ12本ダイヤ」の導入で輸送力がアップした(撮影:尾形文繁)

一方、JR東日本の新幹線は、東京―大宮間は東北・上越・北陸方面への列車がすべて走るため運行本数が多く、その先は各方面に枝分かれしていくという形態の路線だ。増発による輸送力の調整という点では難しいものを抱えている。このような「北行き」「西行き」新幹線のそれぞれの特性が、JR東日本とJR東海など4社のそれぞれのカレンダーの違いに影響を与えているといえるだろう。

2023年春以降もJR北海道の在来線特急料金は年間を通じて同額のままだが、ほかの各社は最繁忙期の設定で特急料金が複雑化する。来年以降は、特急利用時に料金のカレンダーをよく確認したほうがよさそうだ。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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