ロイホのパンケーキ酷評演出は何がマズかったか TBS「ジョブチューン」巡る炎上騒動を生んだ図式

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一方、ロイホ側も、出演協力をしている以上、これまでの放送を見て、番組の趣旨・内容を理解していたに違いない。

収録当日も、スタジオには広報の社員が立ち会っていただろう。

そのうえで、ロイヤルホストは「放送しても構わない」という姿勢だったはずである。

そこには、自社のシェフたちが真剣にメニューを開発していることを、番組で伝えられるという思惑もあったのだろう(広報担当も内心は腹を立てていたかもしれないが)。

しかし、「ジョブチューン」の番組スタッフやロイヤルホストの意図を超えて、「家でも焼けるパンケーキ」は〝炎上〟した。この〝炎上〟は自然発火したが、アクセスを稼げるツールとして、上手に利用するメディアによってさらに延焼した面もある。

「一方的に」「上から目線」、さじ加減は適切だったか

「ジョブチューン」では今年1月にも、コンビニのおにぎりを、見た目を理由に「食べない」というシェフがいて「炎上」したことがある。

〝一流とされる〟シェフが、親しまれているメニューに厳しい論評をする内容は、視聴者から見れば専門的な話を聞くこともできて興味深いものだろう。

だが「一方的に」「上から目線で」、庶民的なメニューを酷評してしまうと、それは反発を招いてしまうのである。

「ジョブチューン」の制作スタッフは、その〝さじ加減〟を間違っていたのではないだろうか。

私はかつて、「中居正広のブラックバラエティ」という番組を演出していたのだが、少々キワドイかも、という場面ではナレーションやテロップに細心の工夫をして「エンタメの範囲」に収まるように心がけていた。

漫然とOAすれば〝炎上〟してしまう場面でも、「ナレーションひとつ」「テロップひとつ」の工夫で、避けることはできる。それは演出における大事な「肝」なのだ。

また今回のパンケーキを批評したシェフも、自らのSNSで出演の経緯を説明し、お詫びする一方で、「批判を誇張する演出は残念」と番組の「編集」について違和感を表明しているが、番組とコミュニケーションは取れていたのだろうか。

「ジョブチューン」に関しては、企画は面白いと思うだけに、炎上に対する予測力・危機管理力をさらに高める必要があるのではないか。

村上 和彦 TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授

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むらかみ かずひこ / Kazuhiko Murakami

1965年生まれ、神奈川県出身。日本テレビ放送網に入社し、スポーツ局に所属。ジャイアンツ担当、野球中継、箱根駅伝などを担当する。その後制作局に移り、「スッキリ」「ヒルナンデス」「ブラックバラエティ」「24時間テレビ」など幅広いジャンルで実績を上げる。2014年、日本テレビを退社し、TVプロデュースの他、執筆、講演会など活動の場を広げている。現担当 : BSフジ「プライムオンラインTODAY」監修演出など。

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