サントリーとアサヒ、訴訟前の熾烈な"抗争" ノンアルコールビールの製法特許を巡り火花

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裁判でサントリーは、特許庁から認められた特許権をアサヒが侵害していると主張。これに対しアサヒは、サントリーが特許出願前に発売したノンアルビール「オールフリー」を例に挙げ、特許として認められた製法は、「既存の製品等から容易に発明できたもの」であること、特許出願後にサントリーが行った特許範囲の修正が、出願当初の内容と矛盾する「無理な補正」であることなどを理由に、特許は無効だとしている。

ドル箱事業の”勝者”は?

サントリーがアサヒに書面を送ってから1年余り。2015年に提訴した(撮影:梅谷秀司)

一通の書面がアサヒに届いてから1年余り。両社が一歩も引かずに製法特許の有効性を争うのは、ノンアルコールビールの成長期待だけではない。ビール・発泡酒・第3のビールより採算がいいという点も大きいだろう。

訴訟でサントリー側が提出した資料には、アサヒのドライゼロの年間売上推定額は200億円、推定利益率は30%と記されている。この計算が正しければ、アサヒは年間60億円を稼いでいることになる。逆に言えば、ノンアルビールシェア1位のサントリーが稼ぎ出す利益はそれ以上になるだろう。

サントリーが勝訴してドライゼロが販売差し止めとなれば、ノンアルビールという成長市場でより存在感を高められる。アサヒは当初から一貫して製法の変更を拒否。サントリーに押し切られると、せっかくの商機を逃すことになるだけに、徹底的に特許の無効を訴えていく構えだろう。 果たして、大手メーカー同士の争いは、どんな結末を迎えるのか。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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