「起業界のハーバード」が教える、成功の鉄則 スタートアップの卵たちが殺到

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投資業界にとっても、アクセラレーターの存在は歓迎そのものだろう。Yコンビネーターは、バッチに参加するスタートアップに12万ドルの資金を与えるのだが、そこにはベンチャー・キャピタリストからの資金も盛り込まれている。つまり、彼らはYコンビネーターと組むことで、芽が出たばかりのアイデアに投資をして、それが育って行くのを見守り、成功した暁には大きなリターンを得ることができるようになった。

入学は、超難関

グラハムが、Yコンビネーターのようなアイデアを考えついたのも、彼自身が起業経験者だったからである。中学生の頃からコンピューターに慣れ親しんできたグラハムが、プログラマーとして1996年に創設したのは、ヴィアウェブという会社。同社は、誰もがオンライン・ストアを開店できるようなサービス・プロバイダーだった。

ヴィアウェブは1998年にヤフーに買収されたが、グラハムはその時の経験を「決して繰り返したくない」と語っている。それほどに起業は大変なものだったのだ。「ただのオタクたちが、商売の方法も知らずにプログラムを書いていただけ」と、その経験不足を思い出している。

だからこそ、後にそのヴィアウェブの創業者らと共にYコンビネーターを創業してアクセラレーターの走りとなり、起業家らに手を差し伸べようとしたわけだ。

しかし、Yコンビネーターが誰にでも手を差し伸べていると思ったら、大間違いである。現在では数々のアクセラレーターが存在する中で、Yコンビネーターは「アクセラレーター業界のハーバード大学」とも呼ばれている。それだけ、ここのバッチに加わるのは難しい。応募しても、ほとんどが選考から落とされるのである。

グラハムによると、成功するビジネス・モデルは単純である。「人々の生活を楽にすること」。ただし、それが素晴らしいアイデアで、実際に使うユーザーも「こんなことが可能だとは、想像もできなかった」と思わせるようなものでなくてはならない。「食べておいしいもの」という表現を、グラハムはよく使う。「ビジネスの裏技があるわけでも、市場で近道をするわけでもない。楽になる度合いとユーザー数が大切だ」と説明する。

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