「死亡者の7割」高齢者の住宅火事を防ぐ4つの対策 「住宅用火災警報器」の更新時期、点検・見直しも

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まず、出火危険についてだが、関澤教授は、高齢者になると慣れ親しんだもののほうが使いやすいため、経年劣化などにより故障のおそれのある安全性が低い暖房器具を使い続けているケースが多いと説明する。

「実際、若い世代がほぼ使わないであろう電気ストーブや石油ストーブを高齢者は使っていることが多く、可燃物が触れたときに火事になりやすいのです」

延焼危険は、燃え広がるリスクのこと。万が一、出火しても周りに燃え広がるものがなければ大きな火災を免れることはできるが、「歳をとると動くのがおっくうになり、周囲にものを置いて密な生活を送っていることから、火が燃え広がりやすい状況になっている」(関澤教授)という。

「例えば、こたつの周りに電気ストーブを置き、衣類も周辺に雑多に置いているのが、1人暮らしの男性に多くみられるパターンといえるでしょう」

そして、避難危険。近年の高齢者は昔に比べて元気で、体力的もある。だが、やはり歳をとるほど心身の機能が衰えてくる。

「身機能が衰えがちな高齢者は、危険に対するとっさの反応が鈍くなり、結果的に逃げ遅れて煙を吸って命を落としてしまうのです」(関澤教授)

こうした3つのリスクを防ぐのが、家族や地域など周囲との支援になるが、独居が増え、さらに孤立化した社会ではリスクを回避するためのサポートが行き届きにくい。とくに認知症やマヒなどがある高齢者では、手助けをする人がいなければ逃げ遅れにつながる。

「1つ付け加えておきたいのは、割合から見ると高齢者の比率は高いですが、高齢者の火災による死亡率はこの30年で半減しているのも事実です。石油ストーブからエアコン、ガスコンロがIHに変わるなど、器具の安全化が進んでいるからでもあり、また高齢者が昔よりも元気で、火災に遭っても逃げられる体力が残っていることも一因です」(関澤教授)

住宅火災を防ぐポイント

火災の件数が減少傾向にあるとはいえ、一度住宅火災が起これば、近隣の住宅まで延焼する恐れがある。家族として、また地域としてどうすれば高齢者が起こす住宅火災を防げるのだろうか。関澤教授は4つのポイントを挙げる。

① 事後対策から事前対策へ
② 防火・防災に特効薬なし 王道なし
③ お年寄りを大事にする 家族・社会のサポートを
④防火・防災の観点だけでなく体力・健康・福祉・住環境向上との組み合わせを

「何より大事なのは事前対策。『どうしたら出火させないか』という観点で、火災を防ぐための備えを万全にすることが大切です。そのためには、高齢者にやさしい(使い勝手のよい)暖房器具や、住宅用火災警報器(火災により発生する煙を感知し、音や音声により警報を発して火災の発生を知らせてくれる機器)などの防災機器を普及させることが課題です。また、離れて暮らす親の火災リスクを減らすための定期的な声がけや、安全性の高い暖房器具を買ってあげることも有効策の1つだと考えられます」

と関澤教授。そういう意味では子どもや孫の役割も大きい。

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