キンプリ3人退所、事務所と彼らの埋められない溝 いま、ジャニーズになにが起こっているのか?

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だがいまやジャニーズにとって、海外進出をあまり悠長に構えていられない時代になっている。世界という意味では、BTSをはじめ同じアジアのK-POPのほうが先んじている。そこにはK-POPがインターネットというメディアをフルに活用して、世界にアピールすることに成功したという一面があるだろう。

一方、ジャニーズの現在の隆盛は、日本国内におけるテレビとの密接な結びつきによって達成された面が小さくない。それは戦後日本のテレビの発達からみて必然的な選択でもあったが、その結びつきの強さゆえに、逆にインターネットへの進出が遅れた感は否めない。

Travis Japanの快挙

とはいえ、そうしたなかでTravis Japanが今年武者修行でアメリカに渡り、世界デビューを果たすという快挙があった。デビュー曲「JUST DANCE!」も、ネットからの配信である。

King & Princeも、デビュー当初から海外への夢を度々口にしてきた。彼らは、ジャニー喜多川のもとでメジャーデビューした最後のグループである。その分、海外への思いもいっそう強いものがあっただろう。実際、今年TikTokでヒップホップ曲「ichiban」が大きくバズッたことは、インターネットを使った海外へのアピールの可能性が垣間見える出来事でもあったはずだ。

もちろん、「King & Prince」という財産を守り、受け継いでいくという永瀬廉と髙橋海人の選択も間違っていない。そのなかで将来的に海外へのきっかけをつかむという考えかたもあるだろう。だが他方でいま述べたように、海外進出に向けて状況は差し迫っているというのも事実だ。

海外進出をめぐるKing & Princeのメンバー間の揺らぎは、おそらく現在のジャニーズ事務所そのものの揺らぎでもある。ジャニーズだけでなく、アイドルの世界はいま大きく様変わりしようとしている。

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太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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